■カンキツ類の摘果
カンキツ類は、花を多く付ける年と少ない年が交互に繰り返す隔年結果性のある果樹です。隔年結果性は、品種により強弱があり、実がたくさんなると小玉果になり、翌年は花が全く咲かず不作となることがあります。カンキツを毎年、安定して収穫をするために、成りすぎた実を人為的に落とす「摘果(てきか)」という作業が必要です。今回は、カンキツ類の摘果作業の概要について解説します。
◇(1)カンキツ果実の成長に重要なこと
カンキツ類の果実は、5月に開花した後、小さな実が黄色くなって自然に落ちる「生理落果」を経て、6月中旬頃から本格的に肥大が始まります。果実の肥大は、主に葉で作られる光合成養分で養われ、葉が少ない、葉の色が優れない樹では果実を太らせる力が弱く、果実を太らせるためには健全な葉をたくさん付けることが重要です。そのため、肥料や春先の剪定(せんてい)を行い、多くの枝葉が出るように管理をします。
◇(2)カンキツの摘果の考え方
カンキツ類の摘果は、生理落果が終わる6月中旬頃から始めます。6月中旬~7月に行う「あら摘果」と8月~9月に行う「仕上げ摘果」に分けて、段階的に行うのが一般的です。カンキツ類では、品種に応じて着果させる目安として果実1個の生育に必要な葉数で示す「葉果比(ようかひ)」が決められています(表1参照)。「あら摘果」で最終の葉果比の半分程度に摘果します。例えば、最終葉果比が100枚の場合、「あら摘果」で50枚に1果程度にして「仕上げ摘果」で100枚に1果程度に仕上げます。言葉でいうのは簡単ですが、実際、葉の枚数がどれくらいある、どの枝にも均一に成っていないなど樹を前にして戸惑うことが多いと思います。例えば、30cm四方で葉が約100枚というふうに感覚的に葉数を捉えて着果数の目安を決めていきます。また、枝により着果が異なる場合は、均一に成らせる必要はなく着果のない枝があれば隣の枝にその分を余分に成らせます。
▽表1 主要カンキツ品種の摘果基準
※甘平は裂果がとまってから仕上げ摘果を行う。
◇(3)カンキツの摘果方法
品種により細かな摘果技術がありますが、ここでは、温州みかんと中晩柑とに分けた大まかな摘果の方法を解説します。共通項として、(1)着果が多いのか少ないのかを判断します。(2)着果が多い時には、あら摘果で樹の外周の上部(樹の高さの1/4)の果実を全部落とし、内裾は強めに摘果をします(図1本紙参照)。温州みかんでは、春から新葉が無い極端な着果過多樹を除き、あら摘果を行わずに仕上げ摘果を主体に行うのがよいでしょう。ただし、仕上げ摘果は、必ず目標の葉果比にすることが条件です。「もったいない」は禁物です。中晩柑では、大きな果実にするため、(1)できるだけ早く、あら摘果で単独果実(果実同士が触れない距離)にしてください。(2)果実間隔を十分とり結果枝の長い大きな果実を残します。(3)大きな果実でも、上向きの硬い枝で下垂しない果実は日焼けや変形しやすいので摘果します。(4)大きな果形のよい果実を適度な間隔にならせるようにしましょう(肥大にともない枝吊(えだつり)や支柱による枝の下垂防止を行う)。9月は、仕上げ摘果の時期です。今からでも遅くないので着果の多い樹は必ず摘果を行ってください。今年は、7月下旬から酷暑のため日焼けした果実も多いと思います。10月頃までに黄色くなった日焼け果は、す上がり果となりますので必ず落としてください。わからないことがありましたら「しまなみ農業指導班(【電話】75-2014)」にお気軽にお問い合わせください。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>