■「海士の道具1」
体一つで20m近く潜ってアワビやサザエなどを獲る素潜り漁士―海士(あまし)。今も三崎地域で活躍しています。
ウェットスーツを着用し始めたのは昭和30年代後半から50年代にかけて、とそこまで古い話ではありません。それ以前はふんどし一つで潜っていました。ウェットスーツはその見た目から串地区では「ダッコチャン」や「クロフク」などと呼ばれました。
ふんどしで潜っていた頃は、体が冷えるため長時間潜ることはできず、船から上がると焚火にあたって冷えた身体を温めていました。しかし、ウェットスーツは保温性に非常に優れ、ふんどしに比べて体が冷えにくいため長時間の潜水を可能しました。
正野地区では、菊池ショウサクさんを介して集団でウェットスーツを購入したといいます。正野地区の渡辺一さん(昭和19年生)が初めてウェットスーツを着用したのは、テングサを取る時でした。とても暖かく感じ、長時間水中にいることができたそうです。
また、現在はウェットスーツの浮力をなくすために腰におもりをつけますが(写真1)、かつては砂袋をおもり替わりにして腰に巻付けていました。
浅いところもサザエやアワビが多かった時代はふんどしで潜れる場所でも十分な漁獲がありましたが徐々に水中の環境は変化し、ウェトスーツや足ひれを導入したことも相まって海士の漁場も次第に深いところへ移動していきました。
漁法は大きくは変わっていませんが、身につける道具は少しずつ進化してきています。ウェットスーツの他に海中ライトやメガネも海士の潜り方に変化をもたらしました。次回ご紹介します。
取材協力:渡辺一さん(正野)、阿部勇二さん、阿部定さん(串)
<この記事についてアンケートにご協力ください。>