前号に引き続き、清水さんのお話をもとに、佐田岬半島の石積みの波止についてご紹介します。
まず、アマシが波止に使用する石を選び、海中で船に積み上げるためのワイヤーをかけます。石の重さは一つあたり約10~20トン、ワイヤーは「6分(ろくぶ)」と呼ばれる直径2cm程の太さのものを使用し、2人がかりで石にかけました。その後ワイヤーを掛けた石をボクセンやキジュウキ(起重機)と呼ばれる蒸気船についている滑車を使用して引き揚げ、ダンベと呼ばれる船(全長約10m)に乗せ、くさびで固定し、波止場まで運びます。ダンベはエンジンの付いたコギボートに引っ張られて移動しますが、この時ダンベの船頭は船がかやらないように(転覆しないように)舵をとります。この時の船員は船頭ただ一人、潮の流れや波をみながら大きな石を積んだ船の舵をとる作業はかなり難しく、責任重大でした。
波止場に到着すると、イシヤと呼ばれる石積み専門の人の指示のもと、石を船から落とし、キジュウキで石を整えて、波止を完成させました。
石波止は建築の段階から潮の干満や土台となる地盤など周囲の自然環境の影響を大きく受けます。以前は現代のようなしっかりとした地固めをすることもなかったので、砂地の上に波止を築いた時、落成式直前に石が崩れて巻き込まれ、危険な思いをしたこともあったそうです。
一つ一つ石を積み、長い時間をかけて完成した石波止。数十年経った今も佐田岬半島の各漁港で静かに役目を果たしています。
協力:清水栄さん
※イメージ図は、本紙またはPDF版をご覧ください。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>