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特集「楽しさ」がつなぐ伝統 -川名津 柱松神事-

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愛媛県八幡浜市

「ボォーホンイエー!」
今年も4月20日から21日にかけて、川上町川名津地区で「柱松神事」が行われ、町中にこの特徴的な掛け声が響きわたりました。
柱松神事は愛媛県内はもとより、四国でも例を見ない鎮火の民俗行事として平成12年に「愛媛県無形民俗文化財」に指定されています。
起源は江戸時代中期に相次いで起こった大火を契機に厄火祓いとして始められたと伝わっており、現在では、鎮火の神事と共に42歳を迎えた人の厄落とし行事としても行われるようになりました。
今月は、柱松神事の様子を、写真で振り返りながら、川名津神楽の出演者のインタビューも交えて紹介します。
※詳細は本紙をご覧ください。

柱松神事の朝は早く、20日7時に天満神社にて神事を行った後、選定された柱松(虫害のため現在は松ではなく杉が代用されている)のある山へ向かいます。長さ20mに切られた柱松を道路に沿って引いていき、ガアラ(河原。川上小学校前の蟻王川を指す)に到着。昼食後、42歳の厄年の男性や青年団による「川落とし」が始まり、祭りを盛り上げます。その後、海水で清められた柱松は天満神社に宮入し、表面に藁やはしごなどを取り付けます。装飾された柱松を住民全員で四方に張った綱を引き、人力のみで立てます。その横にハナヤ(神楽を演じるための仮殿)を設営し、本宮から移した神輿の前で神楽を奉納。翌21日0時を過ぎた頃、たいまつを背負った大魔(ダイバン)に扮した舞人がはしごを登り、曲芸さながら綱を降りていきます。
2日目の日中は唐獅子、五つ鹿、牛鬼などが町内を回り、夕方に柱松を倒して神事が終了します。

【川名津神楽】
川名津神楽保存会 川名津神楽部 部長
伊賀忠三(いがちゅうぞう)さん

◆私にとっての神楽
川名津神楽に参加して50年近くになるという伊賀さんは、平成16年から川上小学校の5、6年生に神楽を指導しています。その川名津神楽の保存継承と後継者育成に取り組む功績が評価され、令和5年度子ども伝統文化フェスタにおいて知事感謝状が贈呈されました。
「もともと内気な性格だった自分を何事にも積極的に挑戦する人間に変えてくれたのは神楽だった。そんな神楽に恩返しがしたい。」73歳になった今でも5時間を超えるという神楽を舞いつつ、子どもたちに指導をする姿にはそんな思いが込められています。

◆「楽しさ」がつなぐ伝統
子ども神楽の演目も、子どもたち自らが選んでいるとのこと。
「大人が押し付けてしまってはやる気も長続きしない。自分たちで選んだ演目を演じ切ることで自信をつけてほしい。」
伊賀さん自身も神楽との出会いで変わったように、子どもたちにも神楽を通してチャレンジ精神が育まれることを願い、温かく見守っています。
「神楽に良い変化を少しずつ加えながら、もっと観客の皆さんと一緒に楽しめるように工夫を凝らしていきたい。」
そう語る伊賀さんの口調は穏やかでしたが、まなざしからは熱い想いと夢がにじみ出ていました。
今回の取材を通して、地域の皆さんが柱松神事を心から楽しんでいる様子が印象的でした。そんな大人たちの様子を子どもたちが「すごい」「かっこいい」と憧れることで、次世代へつながる伝統が川上地区にはありました。

○子ども神楽を演じた正本怜玖斗(まさもとれくと)さん(八代中学校1年生)
子ども神楽に参加したきっかけは、5年生の時、川上小学校で毎年7月に行われる「ひびき集会」で「大蛇退治(おろちたいじ)」を演じたことです。
6年生になった昨年は、それまで子ども神楽で演じたことがない「大魔(ダイバン)」に挑戦しました。セリフが難しかったけど、小さい頃から神楽を見ていて、かっこいいなと憧れをもっていたので自分が演じることができて嬉しかったです。
大人になっても神楽保存会に入り、神楽を続けていきたいです。

○川上地区公民館 館長 﨑田丈茂(さきたじょうしげ)さん
ふるさとCM大賞えひめ’24では、柱松神事を取り上げた「ボォーホン、イエー!」(川上地区公民館)が見事、知事賞(第2位)を受賞しました!
今回、インタビューを受けてくれた正本さんと伊賀さんも登場する受賞作品は、年間100回の放送が予定されています。

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