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〔特集〕子どもたちとつなぐ伝統(3)

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愛媛県内子町

■ふるさとを思い起こさせる、大切な伝統――祭りが子どもたちに伝えること
祭りを訪れた皆さんから聞かれたのは「子どもたちの姿に元気をもらえた」「この時期はやっぱり祭りじゃなあ」という声。その言葉からは立川地区の皆さんの、祭りや伝統行事を大切にする強い思いが伝わってきます。
保存団体とともに立川地区の伝統行事の継承に取り組む武知修一さん。「地域で考え、行動することが大事」と思いを語ります。

◆子どもたちに残してあげたい 祭りの思い出と、心の原風景――
川中三島神社 禰宜(ねぎ) 武知 修一(しゅういち)さん

伝統行事の継続に危機感を抱き始めたのはコロナ前の令和元年。行事に参加する子どもが減り、自分たちの集落だけでは続けることが難しい状況となってきていました。どうすればいいか話し合いをしていたところでコロナ禍となり、祭り自体を中止せざるを得なくなりました。集落の人たちは伝統行事に誇りを持ち「自分たちでやる」「人任せにはしない」という気持ちを強く持っていました。けれども「続けたいけれど、難しいかもしれない」――。そんな雰囲気が漂い始めていました。
動きがあったのはその3年後。「このまま何もしないわけにはいかない」と各行事の代表者と一緒に、小学校の参観日に合わせて保護者に伝統行事への協力をお願いに行きました。結局、この年もコロナのため実施には至りませんでしたが、今年の5月に改めて学校へ。反対する保護者はなく、子どもたちが行事に参加してくれることに――。「やってみたい」と声を上げてくれた子どもたちの存在に、大人も再開に向けた熱が徐々に高まっていきました。
立川地区には祭りに参加したことがない人もいます。伝統行事を受け持つ集落外の子どもに練習に参加してもらうには保護者の協力も必要。それでも「ぜひ参加したい」「貴重な行事を経験させてもらい、ありがたい」という声もありました。祭りを見る側でなく見せる側として、祭りの一員、そして地域の一員のような気持ちになれるのかもしれません。集落の人にとって当たり前にやってきた行事が、外から見てもすてきなことなんだと再認識するきっかけにもなりました。
私も子どもの頃、祭りが待ち遠しく、御供相撲に参加しておこづかいで出店の綿菓子やおもちゃを買うのが楽しみでした。行事の練習で友達と集まるだけでもうれしかったものです。今の子どもたちにも楽しい祭りの思い出を残してあげたいです。祭りや伝統行事の楽しい記憶が原風景となり、大人になってもこの時期になると懐かしく思い出し「また祭りに参加したい」という気持ちにさせてくれます。次は私たち大人が、子どもたちに伝えてあげたい――。それが祭りを続ける一番の動機です。ふるさとを思い起こさせてくれる大切な伝統を、これからもつないでいきたいです。

伝統行事を受け継いでいくために何を守り、何を変えるかを考え、知恵を出し合う立川地区の皆さん。地域に根付く伝統は、当たり前のようで当たり前ではない個性であり、つなごうとする皆さんの地域愛を育むものかもしれません。
子どもたちが経験した楽しい思い出は、きっとそれぞれの地域の風景や、行事を楽しむ大人たちの姿とつながっています。あなたの思い出に残るもの、そして子どもたちに残したいものはなんですか――

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