■そして、上林の子どもたちへ
石工・菅能宇吉が残した石垣や道路は今もそれぞれの場所で生きている
◆地元を学ぶ
上林小学校のふるさと学習の授業では、地域の人やものに触れ、昨年度は地元ゆかりの物語を学芸会で披露した。今年は上林のまちを実際に歩いて回った。
5・6年生は昨年度から地域の人に菅能宇吉さんのことを教えてもらい、学習に取り入れている。これまでの授業で、宇吉さんや朋近さんの当時の姿を資料などで調べてきた。
◆上林に住む人が伝えたい宝
11月9日、上林小学校5・6年生のふるさと学習の授業で模造紙の「マッピング」が机いっぱいに広げられた。「伝えたいこと」「わたしたち5・6年生が知っていること」などの軸に沿って項目ごとに付箋が並ぶ。6人の児童と地域で活躍するゲストティーチャーの3人がマッピングを囲むように座り、授業が始まった。まず、子どもたちが作った石垣の鉛筆立てや松山城など宇吉さんと関わりが深いものを描いたシールが紹介され、宇吉さんにちなんだオリジナルの短歌が披露された。その後、ゲストティーチャーの森光夫さんから石の積み方の違いや上林に昔は石積みの景色が広がっていたことを教えてもらった。さらに、宇吉さんや、朋近さんの生涯がさまざまな文献やインタビューをもとに書かれた資料「上林が生んだ伝説の石工菅能宇吉」を地域の読み聞かせボランティア大西三笛さんが読み上げた。
カネ子さんのインタビューなどが紹介された後、マッピングを作成。「今日新たに知ったこと」の軸には模造紙に収まりきれないほど付箋が並んだ。今回の授業で宇吉さんの生涯をさらに深掘りした子どもたちから「学芸会で披露したい」と前向きな発言もあった。
◆上林から伝える
授業で使った資料は上林小学校の教諭と児童で作った学習教材「ふるさと上林」に綴られている。教材は今年の学習を踏まえ「私たちの誇り上林」にバージョンアップされる。授業を担当した岡山ひとみ教頭は「『上林は誇り』と地域の人たちから聞くと、子どもたちの表情は変わり、上林に残したいことを本気で考えるようになりました。ふるさとへの愛着が一層深まった子どもたち。これからも地域との繋がり、本物と出合う学びを大切にしたい」と話した。
◆地域の読み聞かせボランティア 大西三笛(おおにしみふえ)さん
上林小学校で定期的に読み聞かせをしています。今回のお話をいただいたときに初めて菅能宇吉さんのことを知りました。石垣や道をつくった宇吉さんたちの功績は素晴らしく、誇りに思います。小学生にも、宇吉さんたちの素晴らしさをしっかり伝えたいと読み聞かせをさせていただきました。子どもたちの心の中に響いてくれるものがあればいいなと思います。
◆上林小学校6年生 尾崎蓮(おさきれん)さん
挨拶をするといつも地域の人たちが返してくれる上林のことが好きです。
今日の授業で石垣の積み方やどんな道具を使ったのか聞けてよかったです。低学年のみんなや次入学してくる1年生に宇吉さんのことをもっと知ってもらいたいです。
学芸会の劇や新聞を作ったりすると未来の上林に残ると思います。来年は中学生になるけれど、5年生が下級生に宇吉さんのことを伝えてくれたら嬉しいです。
◆上林小学校5年生 菅野由芽(かんのゆめ)さん
菅能英樹さんや森光夫さんに新たなことを教えてもらえたのが嬉しかったです。
マッピングにも今日知ったことをどんどん書いていけたのでよかったです。1〜4年生からわからないことを聞いたので、みんなが納得できるようなマッピングが作れたらいいなと思いました。
石積みにはいろいろな種類があることを授業で教えてもらったのでみんなに伝えたいです。
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