河之内には竜がいる。
そんな噂があるほど竜に縁のあるまち。それが河之内地区。
◆12年に一度
2024年の干支は辰。河之内地区には竜にまつわるものが多く残されている。地区を流れる表川、雨乞い竜の伝説がある雨滝、土佐まで通じる窟に竜が棲むと言われる窪野淵、上流には唐岬の滝や白猪の滝など竜と縁深いものが今も地元で言い伝えられている。
「これほど竜に縁がある地域なので干支の辰に併せ何かしたい。たくさんの人に興味を持ってもらえることができれば」と惣河内神社宮司の佐伯敦さんは河之内の人たちに伝えた。
◆初めての「しめ縄竜」
12月16日、惣河内神社に大きな稲わらでできた竜が展示された。全長は約12m、胴回りは70cm、背には米俵3体、左手は米の房を持ち、虹色の宝珠を咥え、尻尾には菰があしらわれている。「初めての試みで、大きな縄をなう知識がない。毎年、小さなしめ縄は作ってきたけれど、大きなものは作ったことがないので試行錯誤を重ねました」と河之内地区の浅野和雄さんは話す。
大きな竜をつくるために、東谷小学校で稲刈りをしたときの稲わらや地元の米農家から集めたものなど多くの稲わらを公民館に集めた。「せっかくなら丈夫に綺麗に縄をなっていきたい。一般的なしめ縄は2本でなっていますが、竜づくりでは3本でなうことにしました」と浅野さんは話す。
竜づくりで使う縄は1本でもかなりの長さと厚みがある。「1本作るのに5人掛かりで始めは1日かかりました。でも、3本目を作る頃には半日でできるようになっていました。何事も経験ですね」と浅野さんは笑みを浮かべる。
久万高原町の人形作家林智美さんが作った竜の顔は鋭い目つきの目が印象的だ。「目はおたまに紙粘土を付けて表現しました。身近なもので工夫して作った顔づくり。河之内の皆さんの熱意もありとても楽しかった」と林さんは話す。
「河之内はおいしい米の産地なので稲わらを使いました。近年は米農家の後継者不足や高齢化などで生産量が年々減少していますが、稲わらで縄をなう伝統文化を次世代に残していかなければなりません」と佐伯さんは前を見つめる。
12月16日、東谷小学校の全校児童や愛媛大学の学生などが河之内公民館に集まり、竜づくりの最後の仕上げが始まった。
◆惣河内神社宮司 佐伯 敦(さいきあつし)さん
想像より遥かにいいものができました。公民館の集会で、竜のまちおこしをしたいと伝えたときに、縄で竜を作ろうと地元の人たちがたくさん動いてくれました。見た人に河之内の熱意が伝わり、住んでみたいと思う気持ちになってくれれば嬉しいです。
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