■認知症は誰でもなり得る病気
みなさんは半田市の高齢化率を知っていますか。半田市の65歳以上の高齢者の人口は2万9,556人(令和6年4月1日時点)であり、市内の5人に1人が高齢者となっています。また、厚生労働省の情報によれば、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になり得ると見込まれています。
一方で、市内在住の65歳以上の方のうち、認知症に関する相談窓口を知っているのは、わずか2割ほどです。
今は認知症と無縁の方も、いつか自分自身や家族が認知症になる時が来るかもしれません。また、高齢者だけでなく、若年性の認知症も存在します。認知症を身近な病気と捉え、正しく理解し、誰もが自分らしく暮らせるような地域をみんなで一緒につくりましょう。
今回の特集では、認知症の妻を介護されてきたご家族の方(以下、仮称Aさんとします。)へのインタビューと、誰もが集える„居場所“として認知症の方を受け入れている「カフェ安昌堂(あんしょうどう)」を取材しました。
半田駅前商店街の一角にある「カフェ安昌堂(あんしょうどう)」。昨年6月に「まちかど保健室」としてオープンしました。市のプラチナカフェの認定を受け、今年1月から第2・第4土曜日に認知症カフェを開いています。
■誰もが集える「居場所」
「おはようございまーす」「元気にしとった?」カフェが10時にオープンすると続々とお客さんが訪れ、店主の田窪裕子(たくぼひろこ)さんが笑顔で出迎えます。認知症の方以外にも、一人暮らしの高齢者の方や身体に障がいを抱える方、小さなお子さんを連れたお父さんなど様々な方が集い、あちこちから楽しそうな話し声が聞こえ、笑顔が溢れていました。
■認知症カフェとの出会い
認知症の母を連れ、よくカフェ安昌堂を訪れるという娘さん(以下、仮称Bさんとします)。市が開催している認知症家族交流会に参加した際、参加者からカフェ安昌堂の話を聞き、認知症カフェの存在を知りました。初めは、母を連れていくことに不安がありましたが、田窪さんに話をしたところ「ぜひ連れてきてほしい」と言われ、今では常連となっています。カフェに集まる様々な方と関わることができ、Bさん自身の大切な居場所にもなっているようです。
■「普通にみんなと同じように接してくれるのが嬉しい」
しゃべる人形を自分の子のように可愛がり、離れると不安に感じてしまうというBさんの母。他の飲食店では思うようにしてあげることが難しいそうですが、カフェ安昌堂では、ぬいぐるみ達を並べても誰一人気にせず、温かく受け入れてくれます。このように、認知症の母が自分らしく過ごすことができることが、このカフェの良さだと話してくれました。
■小さなことでも気軽に相談を
「心配事は、人に話すと気持ちが軽くなり、解決することもある。病院や包括支援センターより手前で、地域のおせっかいおばちゃんとして、悩んでいる人の話し相手になりたい。」田窪さんは、そんな想いを持ってカフェ安昌堂を立ち上げました。
■認知症は、特別じゃない
「正しく理解し、周りに相談しながら適切に関われば、認知症は特別な病気じゃない。家族や自身が認知症になっても”まあ何とかなる“と思ってもらえるようなお手伝いができるといいな。」と田窪さんは最後に話しました。
カフェ安昌堂には、そんな田窪さんの優しさが溢れていました。
◆記者レポート
◯認知症と向きあう家族の声
9年前に妻が認知症と診断されてから、献身的に介護をされてきたAさん。取材を通して、実際に家族が認知症になった当事者だからこそ話せる経験や想いを伺いました。
◯気づきから介護へ
妻の異変を感じたのは12年前。聞いたばかりのスケジュールをすぐに忘れることに違和感を抱いたそうです。その後、認知症と診断され、Aさんはショックを受けました。しかし、「今の自分があるのは、これまで支えてくれた妻のおかげ。辛いことがあっても、笑顔を忘れず愛情を持って介護をしていこう」と心に決めました。
◯一人で抱え込まないことが大切
妻が突然怒り出すなどの対応で苦労も多かったというAさん。認知症介護家族交流会や認知症カフェに顔を出し、周りに支えられながら介護をされてきたそうです。
「一人で抱え込むとネガティブになりがち。同じ境遇の方に悩みを話すことで、気持ちが楽になれた。」と話してくれました。
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