■副鼻腔炎について
耳鼻いんこう科 医長
海田 英幸
鼻が詰まって、嫌なにおいがする。鼻水が溜まっている感じがするけど、かんでも出てこない。鼻から喉に何か垂れるような感じがある。こんな症状でお悩みの方は、俗に言う蓄膿症、副鼻腔炎かもしれません。
◇副鼻腔炎とは
ウイルスや微生物が鼻の中に侵入すると、鼻粘膜が腫れて鼻炎が生じ、その奥に開口する副鼻腔(上顎洞・前後篩骨洞・前頭洞・蝶形洞)の排泄路が狭くなったり塞がって副鼻腔炎となります。
経過は、発症から4週間以内は「急性副鼻腔炎」、3カ月以上長引く場合は「慢性副鼻腔炎」と定義されます。急性・慢性によって治療法が変わってきますが、慢性でも急に症状が悪化した急性増悪という状態の場合は、急性副鼻腔炎に準じた治療を行うことがあります。
◇急性副鼻腔炎
発症10日まではウイルス感染、その後は細菌感染の要因が多く、ウイルス感染を疑う場合は対症療法を、細菌感染を疑う場合は抗菌薬にて加療します。炎症が副鼻腔に隣接した組織(眼の周りや頭蓋内)へ及ぶ場合は、緊急入院して治療しなければならないことがあります。
◇慢性副鼻腔炎
残念ながら急性期の治療で改善せず症状が長引く場合には、鼻からの細菌感染以外にさまざまな原因が考えられます。排膿を促す薬剤を使用しながら個々の原因に対する加療が必要となることがあります。
・歯牙が原因(歯性上顎洞炎)
上顎の歯の根元が齲う歯し(虫歯)などで感染している場合、そこから上顎洞に炎症が広がり副鼻腔炎が生じることがあります。この場合は、感染の根本である歯牙の治療を行わないと炎症を繰り返すことになります。当院は歯科口腔外科も併設されているので、当科と連携して治療を進めることができます。
・カビが原因(副鼻腔真菌症)
鼻の役割の一つは、吸った空気を湿らせてあげることですので、鼻副鼻腔内は湿潤環境です。鼻内の換気が良好であれば問題ないですが、鼻炎などで副鼻腔の換気が悪くなると、カビにとっては絶好の住みかとなってしまいます。しかもカビは細菌ではないため通常の抗菌薬は効果がなく、治療としては手術などで物理的に洗い流してあげることになります。
・アレルギー反応など免疫応答が原因(好酸球性副鼻腔炎など)
細菌やハウスダストなどが鼻粘膜を刺激することで、好酸球などの免疫細胞が過剰に反応して2型炎症という強い炎症反応を生じ、鼻茸(ポリープ)やベタベタした鼻汁が産生され副鼻腔炎症状を引き起こします。このタイプは、難治性で再発しやすく、複数回の手術が必要になることもありますが、最近では、生物学的製剤という2型炎症を抑える薬も開発されており、効果をあげています。
このように、長引く副鼻腔炎にはさまざまな原因がありますが、原因の検索にはCTスキャンが有用です。副鼻腔炎症状が続いてお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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