■ウイルス性慢性肝炎の現状
消化器内科 部長医師 平井孝典
今回は肝硬変や肝細胞がん(HCC)となる危険性が極めて高いウイルス性慢性肝炎のお話をします。
◆C型肝炎 (慢性肝炎/肝硬変)
診断にはまずHCV抗体を測定、陽性であれば実際のウイルスの有無(HCV-RNA)を測定します。C型肝炎の場合、ほぼウイルス陽性=慢性肝炎/肝硬変となります。
治療としては、以前は長らくインターフェロン(IFN)という注射薬が中心でした。当院では全国的にも多くの患者さんにIFN治療を行い、HCCの発症を早くに抑えてきました。
現在は副作用も少ない内服の直接作用型抗ウイルス薬(DAA)にて100%に近い確率でのウイルス消失(正式にはウイルス学的持続陰性化:SVRといいます)となります。当院で現在主に投与しているDAAはマビレット(R)(8~12週)とエプクルーサ(R)(12~24週)です。後者のDAAは肝硬変が進行している状態(非代償期)でも投与可能です。また、SVR後には少なくとも半年毎に画像診断と採血を行っています。
◆B型肝炎
B型肝炎は病状が多岐にわたります。診断にはまずHBs抗原を測定、陽性であれば実際のウイルスの量(HBV-DNA)やトランスアミナーゼ(ALT/AST)の数値を測定します。
▽HBV-DNAが高値かつALT/ASTが高値の場合
慢性肝炎/肝硬変の可能性が高く、肝生検等にて確定診断となれば抗ウイルス薬(エンテカビル(バラクルード(R))やベムリディ(R))の永年内服となることが多いですが、1年以内のIFNの投与を行う場合もあります。今では当たり前の治療となりましたが、当院では他院に先駆けて抗ウイルス薬やIFN治療を行ってきました。抗ウイルス薬投与中は2カ月毎に採血、少なくとも半年毎に画像診断を行っています。
▽HBV-DNAが低値かつALT/ASTが正常の場合
活動性が低いキャリアと言われる病態となりますが、1回の測定では不足で、かつ慢性肝炎に移行する症例もあり、経過観察が必要です。
▽他疾患の治療に際し注意を要する場合
HBs抗原陰性であれば(ごくまれなケースを除き)問題ありませんが、HBc抗体が陽性(以前感染したが抗体ができている状態)である患者さんに免疫抑制作用のある薬剤(抗腫瘍薬や免疫抑制剤等)が投与されると致命率の高い急性肝炎となるケースがあり、投薬を行う医師がその危険性を説明した上でHBV-DNAの定期測定を行うこととなっております。これに関しては通常は患者さんが意識する必要はありませんが、今までB型肝炎の指摘のなかった患者さんが医師からのHBc抗体陽性の指摘を受け驚かれることが多く、あえてお伝えしておきます。
▽肝細胞がん(HCC)の早期発見に対する当院の取組
前述のC型肝炎や活動性B型肝炎の治療によりHCCの発生率の抑制に努めていますが、ウイルスのコントロールが良好であってもHCCの発症を完全に抑えることはできません。当院では可能な限り肝生検にて肝臓の線維化やその他の肝疾患(脂肪肝の合併は多くみられます)の有無を確かめており、腹部エコー(US)の2回/年の施行に加え、線維化進行例ではMRIも追加することによりHCCの早期発見に努めています。
近年でもC型/B型肝炎ともに治療経過が良好でも定期通院を中断され、症状がでてから進行した状態のHCCの診断に到り治療に苦慮する患者さんがいます。当院では近隣の医療施設と連携を重要視しています。肝疾患の指摘や既往がありましたら、何卒紹介受診して頂けると幸いです。
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