■今、自分ができることから始めよう
生活習慣病の予防は認知症予防につながるといわれていますが、「これ」という決定的な方法はありません。
大切なのは「何をしたらよいか」ではなく、楽しみながら取り組むことによって「どう刺激のある日常を送るか」ということです。
各地域包括支援センターの認知症地域支援推進員の皆さんにお話を伺いました。
▽人との交流が認知症を予防する
(伊藤) バランスのよい食事、適度な運動、人との交流、趣味を楽しむことなどが認知症予防になると言われています。特に人との交流は大切です。今は、近くに家族がいない方も多くなっています。
そういった状況を考えると、地域との交流はとても大事になってくると思います。
(丹下) 近くのサロンや認知症カフェなどに参加してもらえると、自然と人との交流ができると思いますので、ぜひ足を運んでいただきたいです。
▽認知症予防にとって悪い習慣は改善を
(丹下) 先ほどお話ししたように、規則正しい生活が認知症予防になると言われています。その逆の規則正しくない生活は、認知症予防にとって悪影響だと思います。例えばお酒をたくさん飲む、睡眠時間が短い、体を動かさない、人と話さないといったことが挙げられます。
(伊藤) 認知症は生活習慣病と関係していることが多いです。高血圧や糖尿病の方は認知症となるリスクが高いと言われています。健康的でない生活が認知症に繋がってくると思います。
(大岩) 頭を打つなど、頭のケガが認知症に繋がることもあります。転んで頭を打つことがないように、普段からの運動も大切となってきます。
▽認知症地域支援推進員の役割は幅広い⁉
(大岩) 地域包括支援センターでは、体や頭を動かし刺激を与えることができるよう、介護予防体操や認知症予防ゲームなどを開催しています。
(伊藤) 地域のサロンで認知症の講話をすることや、認知症カフェに専門職として参加し、運営に関わることもあります。また、認知症サポーター養成講座の講師をすることもあります。外に出て認知症の啓発に関わることが多いです。
(丹下) 認知症の正しい理解を普及させることも私たちの仕事の一つです。
(浅野) 認知症に対する不安がある方の相談も受けています。
(丹下) 本人、家族の他に、地域の方からの相談もあるので、センターで相談を受けるだけでなく、ご自宅に伺ってお話を聞いたりもしています。気になることがある方は、すぐに地域包括支援センターに相談してほしいです。
▽地域と病院をつなぐ存在
(浅野) 認知症となった方に対する相談を受けるだけでなく、地域の方々の病院への受診を促す役割も担っています。認知症は完治する病気ではないため、進行をどれだけ遅らせることができるかが重要です。そのため、早期の発見・治療はとても大切です。
(丹下) そのため、私たちは早期に認知症に気づき、病院への受診を促したり、病院と連携しながら支援したりしています。
(浅野) 本人だけでなく、ご家族の方に対しても、介護保険のサービスを紹介するなど、利用できる制度の案内をしています。
(大岩) ご家族の方は、どう対応すればいいか分からないのでアドバイスがほしいという方が多いです。私たちが相談を受けるとともに、同じ悩みを共有できるよう「認知症家族交流会」を紹介することもあります。ご家族の心配・不安を少しでも軽くしたいという思いで支援を行っています。
■認知症予防につながる生活習慣
◇魚・野菜・果物などをバランス良く摂取する
◇エレベーターではなく階段を利用する
◇適度な運動を習慣にする
◇乗り物ではなく歩いて買い物に出かける
◇人と交流する機会を持つ
◇楽しいことを見つけてたくさん笑う
◇楽器の演奏やカラオケダンス、体操を楽しむ
◇趣味を持って積極的に取り組む
◆認知症地域支援推進員の主な活動内容
(1)認知症の方やその家族への相談支援
(2)市民の方に身近な病気としての認知症を理解していただく啓発活動
(3)認知症の方やその家族が状況に応じて必要な医療や介護等のサービスが受けられるよう、関係機関へのつなぎや連絡調整の支援
■楽しみながら人と地域とかかわる日常
認知症の方や家族、地域住民など、どなたでも参加することができる集いの場「認知症カフェ」。認知症予防のための利用もできます。
市内に16カ所あり、最近の出来事や昔話など会話を弾ませながらお茶を楽しんでいます。顔馴染みの方も新しく来られた方も、みんなが心穏やかに過ごせるそんな空間です。認知症地域支援推進員も一緒に参加しているため、疑問や困りごとなど気軽に相談できます。
認知症カフェのひとつ「オレンジカフェしのおかむら」の様子を取材しました。
東部市民センターの一室で開催されている認知症カフェ。お茶を飲みながら認知症や介護のことなどを気軽に話したり、相談したりすることができ、多くの参加者と運営スタッフでにぎわっています。
「参加者が楽しむことができる場所になればいいなと考えています」と話すのは、小牧市にある認知症カフェのひとつ「オレンジカフェしのおかむら」を運営する佐藤章子さん。スタッフが話を振ることで、初対面の方と話すことができるようにしたり、参加者全員で行えるゲームを催したりするなど、楽しい空間づくりを意識しています。
▽地域住民が主体となって
市内には「地域住民が主体となって運営しているカフェ」と「施設・事業所などが運営しているカフェ」があり、「オレンジカフェしのおかむら」は住民が主体となって運営しています。認知症の方だけでなく、認知症予防のためや話を楽しむために訪れる方も多いそうです。
▽養成講座がスタート地点
認知症サポーター養成講座やステップアップ講座を受講し、認知症について学んだ数名の住民が集まり、「講座で得た知識を活かすことができる場」として「オレンジカフェしのおかむら」を始めました。18人のスタッフと地域包括支援センターなどと協力して運営しており、8年目になるそうです。
▽外出のきっかけに
「カフェに来ることはとても楽しく、外に出るきっかけとなっている」と話す参加者の方。子どもに勧められたのがきっかけで参加するようになりました。今では知り合いも増え、趣味の話や世間話などをしており、毎回参加することを楽しみにしているそうです。「周りは元気な方ばかりで、自分も元気をもらえている。いろんな話ができてとても幸せです」と話してくれました。
▽アットホームな空間
途中参加や途中退席も自由にすることができ、気軽に参加することができます。何度も参加している方だけでなく、初めて参加した方も笑顔で過ごせるアットホームな雰囲気です。「人との会話は認知症予防にも効果的なので、まだ来たことがない方にもぜひ参加してほしい。外出の機会や新たな居場所になることができればうれしいです」と佐藤さんは笑顔で話してくれました。
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