■アルコールと健康リスク
のざき内科・循環器科クリニック 野﨑 俊光
令和6年2月19日に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を厚生労働省が公表しました。アルコールの影響は肝臓にとどまらないため、病気と飲酒の関係を正しく理解し不適切な飲酒を減らしましょう。
アルコールは肝臓で分解酵素によりアセトアルデヒドに分解され、さらに酢酸へと分解されます。この分解酵素のはたらきの強い・弱いには個人差があり、弱い場合は飲酒により顔が赤くなったり、動悸や吐き気がする状態になることがあります。これを「フラッシング反応」と言います。最近、フラッシング反応を起こす人は新型コロナウイルス感染症にかかりにくいという研究報告がありました。感染症に強い可能性が示唆された事になりますが、飲酒に関しては、より少ない飲酒量とすることが望まれます。他にも、飲酒の影響は年齢・性別により異なります。
次にポイントをまとめます。
・年齢の違い
高齢者は若い時と比べて、体内の水分量の減少等で同じ量のアルコールでも酔いやすくなり、飲酒量が一定量を超えると認知症の発症の可能性が高まる。
・性別の違い
女性は、一般的に、男性と比較して体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も男性に比べて少ない。
・体質の違い
先述のフラッシング反応を起こす人はごく少量の飲酒でも、強い動悸、急に意識を失うなどの反応が起こることがあり危険
飲酒量はお酒に含まれる純アルコール量で評価します。飲酒量と健康リスクは病気により異なるため、病気毎の発症リスクが上がる飲酒量を下表にまとめてあります。
今後、飲酒量と認知症の発症リスクも明らかになることを期待します。
不眠を解消するために飲酒をする人もいますが、他の病気の発症リスクが上昇したり、入眠には効果があっても眠りが浅くなり睡眠リズムを乱す等の支障をきたすことがあるためお勧めできません。自分が抱えている病気と健康に配慮した飲酒の仕方について次のことに留意しましょう。
・自らの飲酒状況等を、世界保健機関(WHO)が作成したスクリーニングテスト(AUDIT)で把握する。
・あらかじめ量を決めて飲酒をする。
・飲酒前または飲酒中に食事をとる。血中のアルコール濃度を上がりにくくし、お酒に酔いにくくする効果がある。
・飲酒の合間に水(または炭酸水)を飲むなど、アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする。
・一週間のうち、飲酒をしない日を設ける
疾病別の発症リスクと飲酒量(純アルコール量)
※「0g〈」は少しでも飲酒をするとリスクが上がると考えられるもの
厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」をもとに作成
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