今回は触診についてのお話です。私が専門としている整形外科や手の外科の分野では、触診で圧痛の部位を診ることがとても重要です。対面の診療では病院を受診すると、問診・視診・触診・聴診を経て、血液検査やレントゲンなどの検査により正確な診断に繋げます。
新型コロナウイルス感染症の流行により、人との接触を避けるためにウェブ会議や遠隔診療が急速に普及しました。現在の遠隔診療では音声と映像を用いて医師と患者が通話して必要な情報を収集するものです。つまり、電話やテレビ電話を用いて問診と視診までは可能ですが、触診は困難です。しかし通信技術などが進歩した現在は触覚を触3原色と呼ばれる「力」、「振動」、「温度」の三つの物理量に分解して伝送し、再構成することで遠隔触診を実現することが可能になってきています。私たちも様々な研究者と連携して遠隔触診の開発に取り組んでいます。近未来には遠隔でも触覚を伝送した診療が可能になり、病院までの移動に困っている人や感染症が流行している状況などで遠隔触診が威力を発揮するかもしれません。
文責:名古屋大学大学院医学系研究科人間拡張・手の外科学教授 山本美知郎
問合せ:総合政策課
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