皆さんは、アンコンシャス・バイアスという言葉を知っていますか。普段あまり耳にしない言葉と思いますが、実は、男女共同参画社会を考えていく上で、大事な言葉です。6月23日~29日は、男女共同参画週間です。今回は、新城市男女共同参画審議会の鄭(じょん)会長にお話をお伺いしましたので、この機会にいっしょに考えてみましょう。
・鄭智允(じょん じゆん)
愛知大学地域政策学部教授。平成29年から新城市男女共同参画審議会委員を務められている。
アンコンシャス・バイアスに対して一番重要だと思うことは「自分の常識を疑う」ことです。常識を持つことは大切ですが、自分の中の常識と他の人の常識は同じであるとは限らないことを認識し、ありのままの相手を尊重しながら共に暮らすことが求められているのではないかと思います。
■アンコンシャスバイアスについて、職場ではどんな場面で見られますか?
例えば、「長」が付く役職は男性がやるべき、雑用係は女性か若手の男性、飲み会の幹事は若手男性がやるべき、育児中の女性に対しては営業職や単身赴任はまかせられないなどの例があげられます。
■家庭や地域ではどうでしょうか?
日本では、女性が家庭を守って男性が外で働くという考え方があります。家事・育児を女性がするのは当たり前、男らしく・女らしくしなさいと子どもに言うなどです。
また、学校PTAに参加するのは母親が多く、父親が参加すると会長に配役されることがあります。これは、男性だけでなく女性にもジェンダーバイアスがかかっていることや、家事・育児・仕事など、すでに多くの負担を担う女性がこれ以上は背負えないという、偏見だけでは片付けられない現実的な問題もあります。
地域活動についても、PTAと同じ事が起きていて、新城市のアンケート(令和3年度実施)では、行政区の役員に女性を増やすことが必要と8割以上が回答していますが、実際女性が区長に就任している行政区はゼロです。地域全体に「区長は男性。行政区に関することは世帯主である男性。」というアンコンシャス・バイアスがかかっている状態です。
■日本は世界と比較してどうなんでしょうか?
日本は2023年の世界経済フォーラムでジェンダー・ギャップ指数が146カ国中125位でした。OECD(経済協力開発機構)の中で女性の働きやすさが29カ国中27位で、教育の順位は高いものの、政治と経済の順位は比較的低いものになっています。
・ジェンダー・ギャップ指数とは?
男女格差を表す指標「1」に近づくほど男女格差がないことを表しています。
■この状況が続くとどうなりますか?
この状況を放置していくと、いろいろな組織において、女性だけではなく若手の男性においても、やりがいを感じられずモチベーションがどんどん下がる結果につながります。また、いつの間にか様々なハラスメントが生まれます。職場でハラスメントが蔓延すると、コミュニケーション不全につながり、組織全体としてのパフォーマンスの低下につながります。これは喫緊の課題で、アンコンシャス・バイアスを意識することが必要です。
■アンコンシャス・バイアスと上手に付き合っていくには何が大事ですか?
例えば、家事や育児を女性に任せることは女性の負担が大きいだけでなく、男性の家庭からの排除・孤立へと連鎖します。このような負の連鎖を断ち切るためにも、自分自身や身の回りのアンコンシャス・バイアスに早く気付くこと、そしてコミュニケーションを取り、改善策を探ることが大切です。
問合せ:市民自治推進課
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