春日井郷土史研究会 髙橋
◆大谷(おおたに)
弥勒山と大谷山の間に「大谷」という地名がありますが、元は「青谷(あおたに)」であった可能性があります。
廻間町にある岩船神社の境内とその周辺には古墳群があり、さらに東の多治見市との境には、弥勒山、大谷山、道樹山があります。また、この辺りにはかつて宝珠寺という寺があったほか、「堂頭」や「寺跡」という地名がありました。こうしたことから、ここは「死者と仏の谷」とみられていたようです。中でも弥勒山は、ここに祭られた祖先が山から天に上り、弥勒菩薩(みろくぼさつ)となってこの世の子孫に幸福をもたらすという、弥勒信仰から命名されたと考えられています。
また、山と丘陵に囲まれ、川が流れる岩船神社の古墳の位置は、風水では力が集中する「穴(けつ)」に当たり、先祖を祭る最適な場所とされています。ここに祭ることにより先祖から幸福をもらおうというもので、弥勒信仰に通じるものがあります。
これらのことから、「大谷」という地名は、元々、死やあの世へ通じる空と海を象徴する〝青〞を用いて「青谷(あおたに)」であったものが、転訛して「大谷(おおたに)」となったのではないかと考えられます。
大谷:廻間町
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