■「頭をぶつけ、しばらくしてから調子がおかしい?」慢性硬膜下血腫について
津島市民病院 脳神経外科医師
阿藤文徳(あとうふみのり)
◇はじめに
若い方からご年配の方まで、日常生活の中で頭をぶつけてしまうことがあるかと思います。その原因は転倒や交通事故、家事中やスポーツなど様々な場面で起こります。頭をぶつけたその瞬間はなんともなくとも、しばらくしてから調子を崩す方がみえます。CTやMRIで調べてみると脳の表面に血液がたまる「慢性硬膜下血腫」と呼ばれる病気が見つかることがあります。
◇原因とリスク
慢性硬膜下出血の主な原因は、不明な点も多いのですが、頭部のけがや打撲後に生じた脳血管損傷や炎症がもたらすとされています。軽微な頭部外傷後でも起こると言われており、受傷後、数週間から数カ月後に発症するというのが最大の特徴です。
ご高齢の方や、抗血小板薬・抗凝固薬いわゆる「血液をサラサラにする薬」を飲まれている方に発症しやすいです。
◇症状
慢性硬膜下出血の症状は、次第に進行することが多いです。初期は軽度の頭痛やめまい、吐き気などが現れることがありますが、これらの症状は他の病気と混同されることもあります。時間の経過とともに(1)歩けなくなってきた(2)手足が片方動かしにくい(3)頭痛(4)認知機能の悪化(5)呂律(ろれつ)不良(6)けいれん といった症状が出現します。これらの症状がみられた場合は、頭部画像検査(CTまたはMRI)が可能な医療機関を速やかに受診してください。
◇診断と治療
診断には、問診・身体検査・画像検査が行われます。これによって、頭に血液がたまっているかどうかや、その量、場所などが確認できます。血液の量によっては、薬や何もせずに自然吸収を待つこともありますが、症状が強い場合は血液を排出する手術が必要になります。
◇手術方法
頭の手術というと、「怖そう」「大手術」というイメージを持たれるかと思います。ですが、慢性硬膜下血腫の手術は原則局所麻酔で行い、15〜30分ほどの短時間で安全に終了するものです。頭蓋骨に爪の大きさくらいの穴をあけ、そこからやわらかいチューブを用いて血液を排出します。
◇予後とリハビリテーション
早期に診断と治療を受けた場合、多くの患者さんは良好な経過をたどります。手術翌日からお食事や歩行訓練を開始します。適切なリハビリテーションプログラムを組み、日常生活機能の回復を目指します。
◇まとめ
「頭をぶつけ、しばらくしてから調子が悪い」これが、慢性硬膜下血腫を見つけるキーワードです。担当医に頭部外傷があったことを伝えていただけますと診断の手掛かりになり、来院当日に診断することが可能になります。ご心配な症状がありましたら、一度私たちの外来でご相談いただければと思います。
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