■頚椎症(けいついしょう)
津島市民病院 脳神経外科副部長 青山正寛(あおやままさひろ)
◇頚椎の解剖
頚椎は7個の骨と椎間板が、だるまの積み木落としのように連なってできています。この真ん中にトンネル(脊(せき)柱管といいます)が走っており、そこを脊髄がとおります。また、脊髄から分かれた神経根という細い神経が、それぞれの積み木同士の間(椎間孔(こう)といいます)から左右に1本ずつ出ていきます。このように頚椎には脊髄と神経根の2種類の神経が存在します。
◇頚椎症とは
加齢に伴い、骨が変形して飛び出したり(骨棘といいます)、頚椎の関節が分厚くなったり、靭帯が分厚くなり、これらが神経を圧迫し様々な症状を呈してきます。脊髄が圧迫されるものを頚椎症性脊髄症(頚髄症)、神経根が圧迫されるものを頚椎症性神経根症とよびます。
◇頚椎症の症状
頚椎症性脊髄症では、手足の先端から徐々に広がるしびれが生じ、箸を持つなど手の細かい動作がしにくくなり、ふらついたり、つまづきやすくなります。また、ひどくなると尿や便をうまく出せなくなります。頚椎症性神経根症では、首や肩、腕から指にかけて、痛みやしびれを生じ、ひどくなると腕や手にうまく力を入れることができなくなります。
◇頚椎症の検査
加齢とともに頚椎の様々な場所に神経を圧迫する変化が生じてきます。そのため、MRIなどの画像では非常に多くの部位で神経が圧迫されているように見えてしまいます。しかし、これら圧迫のみられるすべての部位が症状の原因では決してありません。われわれは、詳細な病歴聴取、診察を行い、その上でレントゲン、CT、MRIなどの画像検査などを行い、現在患者さんを苦しめている症状の原因の部位を特定し、治療方針を決定していきます。
◇頚椎症の治療
まずは内服治療やブロック注射、頚椎カラーなどといった保存的治療を行っていくことになります。一方、保存的治療で改善しなかったり、歩行障害や尿や便の障害などを呈したり、進行した頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症でも強い痛みで生活に支障がある場合などは、早期から手術をお勧めしていくこともあります。
◇頚椎症の手術
大きく分けて頚椎の前からの手術と、拡大椎弓形成術を中心とした頚椎の後ろからの手術に分けられます。また前からの手術にも前方除圧固定術、人工椎間板置換術、椎間孔拡大術といった様々な方法があります。本来は患者さんの症状や、神経を圧迫している病変に応じてこれらの手術法の中から最善のものを選択すべきですが、日本の病院の一部ではどのような状態であっても後方からの手術で済ませてしまうという風潮があるのも事実です。当院では、すべての手術法の選択が可能であり、患者さんに応じて一番適切な手術法を選択しています。
◎首の痛み、手や足のしびれや痛み、歩きにくさなどでお困りの方は、ぜひ一度、脳神経外科までご相談ください。
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