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とよあけ花マルシェコラム

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愛知県豊明市

秋も深まり、暦の上ではそろそろ冬を迎えます。「道端のお花が少なくなってきて、ちょっと寂しい感じもするわね~!」たしかに!これまで咲き続いていた秋の花たちも、その多くは花の時季が済んでしまいました。これから立春までは戸外で見られる花の種類は減る一方ですが、その中にあって開花の最盛期を迎えるのがヤツデです。「ヤツデってあの大きな葉っぱの?」そうです。「ほ~っ、ヤツデにも花があるんだね?」もちろんです。では、今回はヤツデの花についてお話させていただきます。
ヤツデはウコギ科ヤツデ属の種(しゅ)で、日本にのみ原生する低木です。本州関東以南の寒さなら常緑を保ち、掌(てのひら)を広げたような大きな葉を着けます。耐陰性が高いので、日本庭園や茶室の露地に植えられ、大気汚染の清浄効果もあることから、日陰地の公共緑化にも使われています。歴史への登場は、俳諧の作法書『毛吹草(けふきぐさ)(正保(しょうほう)元年、松江重頼(まつえしげより))』の巻第二「俳諧四季之詞(はいかいしきのことば)」の十月に「八手能花(やつでのはな)」とあることから、江戸初期には町民の生活圏にあったことが窺(うかが)われます。
ヤツデは10月下旬から12月上旬にかけて花を着けます。歳時記において「八手の花」は冬の季語です。「でも、どうしてこんな季節外れに咲くのかしら~?」それは虫集めの競争を避けているからです。もう他の花が少なくなっているので、この時季でも活動しているハエやアブを呼び寄せやすく、受粉もしやすいというわけです。「なるほど~、納得。」
ヤツデの花は白い小輪で、これが球状の房になって咲きます。咲き始めの花には雄しべはあるものの、雌しべはありません。花が咲き進むと、花が丸まりながら雄しべが脱落し、花の先端に雌しべが見え始めます。「ウ~ン?つまり花の咲き始めは雄(おす)だけど、途中から雌(めす)になるってこと?」はい、その通りです。「何でまた、こんなややっこしい咲き方なのかね?」それは近親交配をしないためにです。動物もそうですが、植物においても近親の血が濃くなると、子孫の能力が低下してしまいます。一つの木、枝にある花同士が受粉しないように雄しべと雌しべの活性時期をずらしているんですね。受粉した花はしだいに膨らみ、翌春には黒く熟した実になります。ちなみにヤツデの葉はサポニン系の毒を含んでいるので、決して口にしてはいけません。これに対して熟した実は鳥の餌になりますが、大事を取って食べない方が無難だと思いますよ~!

執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田晶彦

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