文字サイズ
自治体の皆さまへ

とよあけ花マルシェコラム

48/51

愛知県豊明市

もうすっかり秋も深まって、北部山間部では紅葉の盛りを迎えています。節気はこれから立冬、小雪、大雪…と冬へ移行し、鮮やかな花々を見られる場所も、戸外から室内へとシフトしていきます。「ばってん、うちん田舎ではこれから花盛りたい!」おやっ?おたくはどちらの方ですか?
「うちん地元は長崎ん茂木(もぎ)ばい。」おおっ!日本の枇杷(びわ)栽培発祥の地で有名な茂木ですね、なるほど、まさにこれからがお花の季節というわけですね。「そんとおりばい。」「おいおい、何を二人で盛り上がってるの?」いや?。長崎の茂木地区は国内で最初にビワ生産を始めた場所で、今もその生産量は日本一なんです。「へぇ?!で、どうして花盛りなんですか?」それは、これからビワの花が咲き始めるからです。「それでは、今回はビワの花ね?」はい、承知しました。
ビワは、バラ科ビワ(あるいはシャリンバイ)属に分類される常緑果樹で、原産は中国四川省から湖北省にかけてです。その歴史は古く、紀元前90年ごろの『史記(シージー)(しき)/司馬遷(スーマーチアン)(しばせん)』の巻一百一十七「司馬相如列傳(スーマーシアンルーリエジュアン)(しばそうじょれつでん)第五十七」に「於是乎盧橘夏孰,黃甘橙楱,枇杷橪柿……(夏に熟すものには黄柑(おうかん)、柚子(ゆず)、ビワ、ナツメ…)」と登場しています。中国風景園林樹木学会での発表によれば中国古代の風土記『莆田県記(プーティェンシエンジー)』に「枇杷(ピーパー)…因其叶形似琵琶而得名(インツーイエシンスーピーパーアールドゥァミン)」と記載があり、ビワの名はその葉の形が楽器の琵琶(びわ)に似ていることから名付けられたようです。古くより解熱や解毒などの効果が認められ、多くの本草書(ほんぞうしょ)に薬効が記載されています。
我々にとってビワの楽しみは、初夏に収穫されるビワの実ですね。「ええ、甘酸っぱくて、独特な味わいですわね。」「香りもいいよね」そうですね。この香りはビワの花が咲いている時からあるんです。ビワの花は、晩秋から白い花が咲きだし、その後冬の期間ずっと咲き続けます。「なんでまた、こんな時季に咲くのかね?」それは他の花との競争を避けるためです。咲く花の少ない冬は受粉を助けてくれる鳥や昆虫などの媒介者を独り占めできるんですね。ただし、冬は媒介者も減ってしまうので、呼び寄せたそれらに長い間とどまってもらうために、大量の蜜を貯めておく必要があります。この蜜は昆虫を誘うための香りを含んでおり、この時季にビワの木の近くを通ると、とても良い香りが伝わってきます。
これから日に日に寒くなっていきますが、ふと良い香りが伝わって来たならば、そこにビワの木があるかもしれません。そんな時は足を留めて、ビワの花を探してみてくださいね!
執筆/愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU