加茂病院 富所 隆
前回は平均寿命と健康寿命について説明し、健康寿命を延ばし、高齢者が輝ける社会を作ることがこれからの日本に大切なことなどと話しました。
さて、これから数回に分けて健康寿命を延ばす工夫って具体的にどんな生活なのかについてお話しします。
健康寿命に大切なのは、(1)食事、(2)運動、(3)コミュニケーションの三つです。
始めに食事について述べます。
戦後の食糧難時代を乗り越えた日本ではそれまで圧倒的に高かった穀類(米や小麦など)でのエネルギー摂取から肉や乳製品からのエネルギー摂取が主体になってきました。いわゆる食生活の欧米化ですね。脂肪やたんぱく質の摂取が増えた結果、日本人の体格はとても良くなってきました。学校給食法が制定されたのが1954年でしたが1979年には全国小学校の99.4%で脱脂粉乳をはじめとする給食が行われています。給食のおかげで子どもたちの身長は伸び、体重も増え体格が改善されてきました。一方、この給食が現代の日本人の食生活を変化させたと考えられています。肉や乳製品を食べる機会が多くなり、動物性の脂肪の摂取が増えてきました。飽食の時代と言われますが、体格改善を通り越して、肥満とそれに起因する高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病と呼ばれる疾患が増えてきました。腹八分目という諺(ことわざ)がありますが、300年前に書かれた貝原益軒の『養生訓』でも繰り返し、“腹いっぱい”は止めるようにと記されています。
私たちは生きるために毎日食事をします。食事をすると脳からドーパミンという幸せホルモンが分泌されます。ストレスがたまった時にチョコレートなどの甘いお菓子を食べてしまうことなどはその表れですね。一方、食欲を抑えるレプチンという満腹ホルモンが私たちの脂肪細胞の中にあり、脳を制御して食べすぎを抑えてくれています。ですが食べ過ぎが常態化してしまった人には、このレプチンが効きにくくなっています。過食の特徴は「早食い」と「コントロール障害」です。レプチンの力を復活させるためにゆっくり食べる事、我慢することをしばらく続けてみてください。腹八分目がさほどつらくなくなってくるはずです。
次回は、おすすめの食べ物についてお話しします。
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