加茂病院 富所 隆
健康長寿のための二つ目のキーワードは運動です。
年をとると体が弱っていくことは自然の現象です。加齢によって「筋力の低下、歩行速度の低下、疲れやすさ、体重減少」のうち3つ以上がみられる場合をフレイル(虚弱)といい、そのまま放置すると介護が必要な状態になる危険性が高まります。しかし、フレイルの状態であるうちに適切な対処を行うことで健康な状態へと改善し、健康寿命を延ばすことが可能になります。
運動を行うことは、肥満を予防・改善し、血糖値や血圧、血清脂質を良い状態に保つ効果があり、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病の予防を図ることができます。また、気分転換やストレスの発散にもなり、精神的な安定を促すこともできます。運動によって脳内の幸せホルモンが放出され、幸福感やリラクゼーションをもたらします。さらに、適切な運動は筋肉を強くし、骨密度を向上させて、骨折のリスクを減らすことができます。腰痛や膝痛などの改善も期待できます。運動は心肺機能を高め血液の循環を良くし、その結果、免疫機能が高まり、風邪などの感染症にかかるリスクも低くすることが可能です。
注目すべきは、近年、運動は認知機能の向上にも関与する可能性があることが報告されていることです。定期的な運動は脳の血液循環を促進し、記憶力や注意力の向上に貢献し、認知症の発症リスクを低減するとも言われています。
こんなことを話すまでも無く、運動が大切なことは皆さん良く理解していることですよね。ですが、実際に毎日運動をしている人はとても少ないのが実情です。WHOの報告によると、日本では成人の35.5%(男性33.8%、女性37.0%)が運動不足だと指摘されています。エレベータをやめて階段を使う、近所での買い物には車ではなく徒歩で行く、などでも十分です。
次回は具体的な運動目標についてお話しします。
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