■ライバルあれこれ
市長 櫻井雅浩
春はあけぼの
やうやう白くなりゆく山ぎは
すこしあかりて
紫だちたる
雲の細くたなびきたる
『枕草子』の冒頭部分である。作者は清少納言。平安時代、今から約千年前の作品。昔、覚えさせられた、という人も多いだろう。何度口ずさんでも美しい春の描写である。
この当時、女性の本名は明らかにされず、清少納言(せいしょうなごん)は通称である。「清」は生まれた清原姓を意味し「少納言」という官職に就いている男性、の関係者という感じになる。今から見れば女性を官職にひも付けして呼ぶなど随分理不尽な話である。
ライバルは紫式部。NHK大河ドラマ「光る君へ」主人公のモデルとされる女性である。作品は『源氏物語』。ほぼ同時代に生きた才女二人で、元祖ライバルと言っても良いかもしれない。残念ながらあまり仲が良くなかったというか、お互いにかなり厳しい指摘が作品に見える。
それぞれの作品の中には花も出てくる。花といえば、奈良時代までは中国伝来の梅、平安時代以降は日本の山に自生の桜、と決まっている。微妙にライバル。また、国語の先生みたいになってしまって恐縮である。
「この桜吹雪に見覚えがねえとは言わせねえぜ」と言うのはご存じ?遠山の金さんだが、「花吹雪」を世界一美しい言葉、と讃えたのは哲学者の谷川徹三氏である。もちろん二人はライバルではなく、時代、虚実を超えた桜花に魅せられし同好の士?であろうか。
「ひとそれぞれ好みはあるけどどれもみんなきれいだね」とSMAPも歌っていた。タンポポの黄、オオイヌノフグリの青、オウレン、トキワイカリソウの白、ショウジョウバカマ、カタクリ、花桃のピンク、タチツボスミレの薄紫。みんな仲良く咲いている。山紫水明。皆さん、柏崎の山野に花を見に出かけましょう。
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