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自治体の皆さまへ

新春特集 まち・人を知り、大切な人を守る ~地域防災力のさらなる向上を目指して~(3)

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東京都中央区

■自助・共助の重要性について

髙橋:
マンションと町会との関係にはさまざまな形があると思いますが、共助の取り組みについては、地域全体で意見を出し合いながら進めていくことが大切ではないかと思います。
区が助けてくれるから大丈夫という考え方もある中で、さまざまな現実を踏まえて考えていかないと、災害時に本当の意味での共助が行えるかどうか、なかなか難しいと思っています。地域は利用してもらえればいくらでも協力できますが、関係性を自分から築くという考えが今の日本人には少しなくなってきている面があるので、協力関係を築いていくという点で課題もあると思っています。
それでも、ただ困っているというだけでは仕方ないので、災害時に地域全体ではこういう形で動くという周知のチラシをマンションの掲示板にも貼ってもらっています。マンションだけで自助ができるのか問いかける機会があれば、また変わってくるとも思っていますので、マンションに働きかけて地域とのつながりをつくっていくという仕組みを、区も含めて検討していく必要があると思います。

宮地:
阪神淡路大震災のときは、救出された方の約8割が近隣の住民による共助だったと聞いています。
いざという時には、遠くにいる家族ではなく、自主防災組織や先ほどからお話に挙がっている顔の見える関係が大切で、例えば、同じマンションに住んでいる住民同士がエレベーターの中であいさつを交わすといったあいさつ運動の大切さを小池都知事も強調しています。
自主防災組織の活動数はこの10年で半分以下に減っていて、備蓄や家具の転倒防止対策といった自助の取り組みに関するアンケート結果でも、東日本大震災以降上昇傾向だったものがここ数年は横ばいになっています。いつ何が起きても対処できるように、常に「今」起きるかもしれないという気持ちで過ごすことがとても大事だと思います。
東京都では『東京防災』と『東京くらし防災』という冊子をリニューアルしたので、区と連携して意識啓発をしていきたいと思っています。

大木:
自助の意識が高まっていくと自動的に共助に向かうという社会性を人は持っているということを最近感じています。留学生を対象とした防災教育では、自助についての学びが深まった後に、「地震を知らない」グループと「地震を知っている」グループの2つに分けて、地震が発生したとする演劇を行いました。すると、共助について教えていないにもかかわらず、「地震を知っている」グループは、パニック状態になっている「地震を知らない」グループを落ち着かせる行動を自然に取りました。社会性というのは人間の持つ大きな強みです。自助の意識が高まれば共助の意識も高まるというのは、その社会性によるものだと私は解釈しています。
避難訓練も、参加したかしていないかで二分するのではなく、「無事です」というカードを玄関に掲げることで訓練に参加している(しかし訓練会場には行かない)といった関わり方のグラデーションをつけるとよいでしょう。誰もが簡単に一歩を踏み出せるような、自由に参加できるような方法を設計していくことで、参加者がどんどん増えて、自助の範囲も広がっていき、結果的に共助に思い至る方が増えていく、このようになっていけばよいと思います。

■区民の皆さん・未来を担う子どもたちに伝えたいメッセージ

大木:
子どもは楽しんで学ぶのですいすい動く一方、大人は誰かのためじゃないと動かないんです。例えば、家具を固定するのは面倒ですよね。でも、「皆さんより長生きする子どもたちに、家具の留め方を教えるためにやりましょう」と伝えると、この面倒なステップが「誰かのために動く」という教育的価値を持って光り始めます。
これを行政が戦略的に行う場合について考えてみましょう。幼稚園・保育園の防災教育を充実させることで、小さい子どもを持つ親(リスク認知度が高い群)も含めた、2世代同時の防災教育ができます。子どもは自分で学んでいき、大人は誰かのために学び、行動するという形で2世代同時に防災教育が進みます。祖父母への影響はさらに大きく、孫のためならと家具の固定をしてくれるでしょう。
自分が大事に思う人のことをもう一度考えて、その人のために何ができるか、つまり、今、地震が起きたらどうするかを考えるとともに、自分が大事に思う人のために何ができるかという視点で切り込んでいく。こういった進め方が、結果的には、その人自身も救うことになると思っています。

髙橋:
地域の中でいろいろな活動をしている人たちがいるので、新しく転入した方々には、地域をもっと知ってもらいたいと思います。当然、日本橋・京橋・月島で地域性は違いますので、その地域の違いを理解しながらまちづくりをしていかないといけないと思っています。忙しい方も多いので、もっと地域を知ろうという運動を行政が展開すると防災活動や地域への愛着につながっていくと思います。
行政と町会も含めて協力してやっていけるような動機づけや仕組みづくりにも取り組んでいきたいと思っています。例えば、盆踊り大会は浜町音頭を踊りたいという思いから、どんどん新しい人たちが参加してくれています。こうした核を大きくして顔見知りの人たちが増えていけば、次の展開につなげやすくなると思います。

宮地:
基本的なことですが、大切なことは、災害リスクを知ること、防災について考えること、行動に移すこと、この3つだと思います。特に災害リスクを知るという部分は、例えば南海トラフ巨大地震を西日本の地震と考えると、対策を間違えてしまうかもしれません。高層ビルが最も苦手とするのが長周期地震動で、東日本大震災のときよりも大きな揺れが予測されているので、実際に起こり得ることを知るのが非常に大事だと思っています。その上で、防災対策について考え、実際に防災行動に移してほしいと思います。東京都の被害想定でも、朝、昼、夜によって被害の様相が全く異なるので、発生時間帯によって自分がどう行動するのか、イメージしておくことが大事だと思います。
また、昨年も世界中でいろいろな災害が起きていますが、子どもたちもニュースなどを見て世界で起きていることを知ることが非常に大事だと思います。日本は災害大国と呼ばれている国です。これまでさまざまな対策をして、やれることをやってきた中で、それでも「想定外」が起きてしまうのが災害なのですが、今、テクノロジーを使って課題を解決しようという新しい取り組みも始まっています。日本には、世界の課題解決につながる防災対策も期待されていると思いますので、そういった未来の視点で、子どもたちには、今、起きていることをどうやって解決していけばいいのかという視点を持ってニュースを見てもらいたいと思います。

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