■若い世代が未来へ語り継ぐ平和への想(おも)い
昨年12月11日〜16日、公募で選ばれた区内在住・在学者が、戦争で激戦地となったグアム・サイパンで海外事情調査を行いました。
戦争の記憶をたどった参加者のうち広報班4名の想いをご紹介します。
◇戦争を忘れてはいけないのは何のためなのか
劉 佳帆(りゅう かほ)さん(大学生)
「戦争を忘れてはいけない」という言葉は広く共有されていますが、ここでいう戦争は過去しか指していません。この訓告の趣旨は、戦争がもたらす惨禍を忘れず二度と繰り返してはならないというものでしょうが、果たしてそれは実践されているのでしょうか。
第二次世界大戦以後、日本は戦争当事国にこそなってはいませんが、今日のグローバル社会において“世界のどこか”で起こっている戦争・紛争と無関係でいられる国家は一つとしてありません。歴史や文化を学ぶことは、「戦争を見ないふり・知らないふり」をしないために何よりも重要なことです。
私自身、「戦争を忘れてはいけない」のは何のためなのか、そして今起こっている戦争に対してどう行動すればよいのかを考える主体でありたいと思っています。そして、拙文(せつぶん)を目に留めてくださった方々もそうあってほしいと願っています。
◇人が一人生きることで、誰かを何かを変える力が生まれる
宮崎(みやざき)ひな子(こ)さん(大学生)
戦争中、生きたくても生きられない人がいます。平和な社会で命を絶とうとする人がいます。この差はどこから生まれるのでしょう。私たちは人生にもがき苦しむ中で、誰もが各々の“戦場”で戦っているのかもしれません。
人が一人生きることで、誰かを何かを変える力が生まれることを私は伝えたいです。自分は価値があり、生きていいと気づいてもらいたいと思います。また相手の立場に立つ勇気も大切です。なぜ意見が合わず対立が起こるのか、自分目線だけでなく、相手目線に立ってみてほしいと思います。相手は違うヒントをくれるかもしれません。
“日本人”として世界に羽ばたく前に覚えていてほしいことがあります。単なる暗記科目だった歴史、記された一文字はたくさんの犠牲と勇気、悲しみのもとで生まれ、今の私たちに学びを与えてくれているのだと。
◇今ある平和は決して当たり前ではない
寺澤 太星(てらざわ たいせい)さん(高校生)
今伝えたいことは主に二つです。
一つ目は、グアムの方もサイパンの方も日本のことが好きだということ。第二次世界大戦中、現地の人は戦禍に巻き込まれたにも関わらず、グアムは「私たちは忘れない。でも許す。」という大きな決断をし、話し合いによって解決しました。サイパンでも戦争の経験者が「日本が大好きです!」と語っていました。
二つ目は、戦争は本当に恐ろしいということ。私も含めて、多くの方は戦争がどのようなものかをあまり知らないでしょう。しかし、現地で見た防空壕(ぼうくうごう)や多くの人が身を投げたバンザイクリフでは胸が苦しくなりました。戦争は罪のない人々を一瞬にして帰らぬ人にしてしまう。今ある平和が当たり前ではないことを皆さんに考えてほしいと思います。
◇過去から学び、異なる文化や歴史を尊重する
酒井(さかい)ひなたさん(社会人)
今回グアム・サイパンで起きた戦争の歴史を深く学び、日本で生まれ、生きている日本人として、当時の日本によるグアム・サイパンの領土占領、サイパン委任統治による先住民への日本式教育、先住民を戦争に巻き込んで犠牲を出してしまったことなどに対して、申し訳なさや後ろめたい気持ちを持ちました。しかし、現地で当時の人たちの言葉を知り、今を生きる人の話を聞き、単に過去の歴史を振り返ってその場で反省するだけでは不十分だと痛感させられました。
私たちが今起きている戦争に目を向けるなら、過去から学び、平和を築く努力をし、異なる文化や歴史を尊重する心を持ち続けることが欠かせないと考えます。未来の世代に戦争の痛みや悲劇を伝え、ともに理解を深めることで、平和な未来への一歩を踏み出すことができるでしょう。
■報告会に参加した「千代田区×区内12大学魅力発信プロジェクト令和5年度PRサポーターズ」が伝えたいこと
◇戦争を自分事として捉える
私は太平洋戦争の表面的な部分しか知らなかったことを痛感しました。戦争の痕跡はあっても、知ろうとする姿勢がなければ、風化してしまうのだろうということも。
そして、悲惨な歴史を心の中に残して生きていく意義を実感。また、一人ひとりが「戦争を自分事として捉えなければならない」というメッセージを多くの人に伝えていく必要があることも感じました。私も周囲に伝えることからはじめます。
上智大学2年 津田(つだ)あやさん
◇言葉を適切に使う重要性
平和な未来を築くためには、歴史的背景への理解だけでなく当事者の視点を理解することが不可欠であるということ、そして聞き伝える側が正しく伝えることの重要性について、考えさせられました。
相手の視点を理解するにも、そして学んだことを伝えるのにも、言葉は必要不可欠です。ならばそれを正しく用いることが、平和な未来を築くための第一歩になるのではないかと、私は考えます。
二松学舎大学2年 藤川 紗綾(ふじかわ さあや)さん
■グアム・サイパンを巡(めぐ)る
現地に残る多くの戦争遺跡を目の当たりにし、お住まいの方から当時の様子を聞くなどで平和の大切さを自分事として捉えることができました。
※本紙に写真が掲載されています。
問合せ:国際平和・男女平等人権課国際平和担当(区役所6階)
【電話】03-5211-4165
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