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【特集】山王祭~2200日ぶりの神幸祭(じんこうさい)~(2)

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山王祭で各町会が使用する祭礼用具などには、さまざまな歴史があります。その中から、区指定有形文化財に指定されている絹本墨書(けんぽんぼくしょ)掛軸「日枝神社」山岡鉄舟(やまおかてっしゅう)筆と杉山鶏児(すぎやまけいじ)筆「大日本帝国憲法発布奉祝文(だいにほんていこくけんぽうはっぷほうしゅくぶん)」及び河鍋暁斎(かわなべきょうさい)筆「舞楽蘭陵王図幕絵(ぶがくらんりょうおうずまくえ)」の2つをご紹介します。

[令和6年4月1日に新指定]
■絹本墨書掛軸「日枝神社」山岡鉄舟筆
本作品は、麹町五丁目町会(元々は旧麹町八丁目町会)で代々受け継がれてきた掛軸で、麹町五丁目町会の御神酒所(※7)に掛けて使用されてきました。箱書(はこがき)(※8)の年代によれば、明治30(1897)年から現在に至るまで少なくとも約130年にわたって使用されてきたことが推測されますが、制作や入手などの経緯については不明とされています。
山岡鉄舟が社号(※9)を揮毫(きごう)(※10)した作品は各地で確認されていますが、幟(のぼり)や扁額(へんがく)が多く、掛軸の形態で残された作例は限られています。鉄舟の書跡は存命時から美術品としての価値が認められていたため、屏風や床の間用の掛軸など鑑賞用とされることが多く、本作品のように祭礼用具として実際に使用されてきたのは極めて珍しいと考えられます。
山岡鉄舟は、王羲之(おうぎし)の書法帖や空海(くうかい)の書跡を臨書(※11)して自身の書体に至ったと述べ、いわば鉄舟流と呼べる筆致(※12)となっています。本作品は行草体で揮毫し、「日」の筆回しの勢いや「社」に至るまでの充実した墨ののりに心身の充実と緊迫がうかがえます。字間は一見すると狭いのですが、書跡全体の伸びやかさは失われていません。たっぷりした墨使いと合わせても、最も気力が充実していた晩年の鉄舟に相応しい作品です。落款(らっかん)は「正四位」の位階と本名の「鐵太郎」、さらに「拝書」と書かれ、「日枝神社」の社号を揮毫するに相応しい最高の敬意を表しています。
この作品は明治15(1882)年に官を辞して以降の書家としての活動の一端を示すだけでなく、麹町地域の人々との結びつきを示すものとして重要な意味を持っています。

(※7)祭神に神酒などの神饌(しんせん)を備える場所や神輿が休む場所として氏子町会で設置
(※8)掛軸を入れた箱に記載された題名や署名など
(※9)神社の名前
(※10)毛筆で文字を描いたり絵を描いたりすることで、特に著名人が頼まれて書を書くこと
(※11)手本を傍らに置き、見ながら字を書くこと
(※12)書きぶりや筆のおもむき
(※13)幕末から明治時代初期にかけて活躍した勝海舟、山岡鉄舟、高橋泥舟

◇山岡鉄舟
(天保7(1836)年~明治21(1888)年)
本名を山岡鐵太郎(てつたろう)といい、幕末から明治時代の幕臣、官僚として活躍し、一刀正伝無刀流(いっとうしょうでんむとうりゅう)を開いた剣術家としても有名です。江戸幕府では将軍徳川慶喜の警固(けいご)の精鋭隊の頭となり、江戸城開城の協議では幕府側の交渉役として尽力しました。明治維新後は新政府に出仕し、明治天皇の侍従などを歴任しました。また書にも通じ、書家としても「幕末の三舟(さんしゅう)」(※13)のひとりに数えられ、多くの人から揮毫を求められたといいます。明治16(1883)年には谷中の全生庵(ぜんしょうあん)を建立するなど仏教の興隆にも尽力しました。

■杉山鶏児筆「大日本帝国憲法発布奉祝文」及び河鍋暁斎筆「舞楽蘭陵王図幕絵」
本作品は、明治22(1889)年2月11日の大日本帝国憲法発布を祝うために、当時の麹町四丁目町会が依頼して制作された幕絵で、関東大震災後の区杉山鶏児筆「大日本帝国憲法発布奉祝文」及び河鍋暁斎筆「舞楽蘭陵王図幕絵」画整理により麹町三丁目町会に受け継がれ、山王祭では麹町三丁目の御神酒所に掲げられてきました。
幕絵は舞楽の蘭陵王が題材で、南北朝時代の中国の高長恭(こうちょうきょう)が美貌を隠すために獰猛(どうもう)な仮面をつけて戦いに臨み勝利を収めた故事にちなんだ演目を描いています。暁斎の描いた幕としては数少ない現存例であり、最晩年の制作であるという点で、美術史上注目すべき作品です。

◇河鍋暁斎(天保2(1831)年~明治22(1889)年)
幕末から明治時代にかけてあらゆるジャンルを描き、画鬼とも称されました。

◇杉山鶏児(生没年不詳)
静岡県の士族出身で文部省に出仕し、明治10年代には、漢文学などの古典や骨董に関する出版物に携わっていました。

■千代田区指定文化財をテーマに展示
6月~12月に日比谷図書文化館の常設展示室で区指定文化財を展示します。第1期(6月~8月)には、本特集に取り上げている山岡鉄舟の書を公開します。山岡鉄舟の勢いのある筆使いや落款を直接確認できる貴重な機会です。ぜひお楽しみください。
場所:日比谷図書文化館1階(日比谷公園1-4)
日時:6月18日(火)~8月18日(日)

問合せ:日比谷図書文化館文化財事務室
【電話】03-3502-3348

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