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【特集】「すぎなみビト」切り絵作家~佐川綾野(1)

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東京都杉並区

■プロフィール
佐川綾野(さがわ・あやの)静岡県生まれ。中学生の頃から独学で切り絵の制作を始める。京都府の美術大学で版画を学び、卒業後再び切り絵の世界へ。
著書に「はじめてでもできる心が整ういや癒しの切り絵」(ナツメ社)、「そのまま切って飾れる きれいな5色の切り絵帖」(ホビージャパン)など。西荻窪のアトリエで切り絵教室を開いたりSNSで切り絵動画を配信したりするなど、切り絵の魅力発信にも積極的に取り組んでいる。



■木版画をきっかけに、見よう見まねで切り絵を始めた
Q:いつ頃に何がきっかけで切り絵を始めたのですか?
A:子どもの頃、学校に飾ってあった木版画の作品を目にして、自分も作ってみたいと思いました。ですが、木版画には道具がたくさん必要で難しかったので、木版画と似ている切り絵を作ってみようと思ったのが始まりです。当時は中学2年生。その年頃ならではのエネルギーでどっぷりと制作に励み、高校時代にはかなり大きな作品も作っていました。

Q:その後、大学では木版画を専攻されたそうですね。
A:京都の美術大学の版画科へ進学し、在学中は切り絵ではなく木版画に力を注ぎました。でも、木版画は材料の版木がとても重くて、削るにもかなりの力がいるんです。とても体力を必要とする作業で、疲れてくると重い版木をひっくり返すこともできないくらい。私にとってはその点がなかなか苦しいところでした。卒業後も制作を続けていくに当たり、もう少し気軽にできるものはないかと考えたとき、思い出したのが切り絵だったのです。

■切り絵に「ぼかし」の美しさを取り入れて
Q:切り絵はどのように作っていくのですか?
A:まず、紙に図案の絵を描き、線や面として残す部分と、切り抜く部分を考えていきます。線を細かく切ると繊細さが表現され、大胆に面を残すと強さが出てきます。どの作品も図案のベースにあるのはファンタジーで、幻想的な物語を切り絵で表現したいという思いが根底にあります。ですから、できるだけ主人公がいる作品、人物が入った図案で切り絵を作りたいと思っていて、人物の表情は制作する中でも特に大切にしているポイントの一つです。一方で、モチーフについては幻想的なものというよりは、日常の暮らしの中で「これを切り絵にしたらきれいかな」と、ヒントを得ることが多いです。

Q:佐川さんの作品は、独特の色使いがとても目を引きます。
A:色付けには和紙を使っていて、色和紙ならではのぼかしを取り入れて色
を表現するところは、私の切り絵の最大の特徴と言えるかもしれません。
「筆で色を塗っているの?」と聞かれることも多いです。和紙は透過性が
あるので、光にかざすとステンドグラスみたいですごくきれいなんですよ。

Q:色の表現に和紙を使うようになったのは、何がきっかけだったのですか?
A:原点にあるのは木版画です。木版画の作品というのは、刷り上げたときにいかにぼかしの表現がうまくいくかが重要視されるのですが、そのぼかしの美しさを切り絵にも取り込めないかと考えたことが、和紙を使うことにつながっています。また、大学時代の恩師が和紙の研究者で、在学中に私も和紙の制作現場へ行く機会があり、そこで作り手の思いに触れた経験も、和紙を大切にしていきたいと考える背景にあります。切り絵作家として活動を始めてからは、日本各地の和紙の産地を訪れて、原料となる植物の刈り入れから経験し、和紙ができていく過程を体感することで、より理解を深めていきました。今は、見たり触ったりするだけで厚さや種類が分かるほど、和紙になじんでいます。

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