―「まぜこぜ一座(いちざ)」を通して、気付きや感動を届けたい。―
■しぶや区ニュース×渋谷のラジオ 渋谷のラジオで出張インタビュー
多様で個性的な表現者が集まる「まぜこぜ一座」を設立した俳優・東ちづるさんと、ドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダさんにお話を伺いました。
・俳優、一般社団法人Get in touch代表 東(あずま)ちづるさん
「私たちの活動を通して、「まぜこぜの社会」の豊かさを多くの方々に届けていきたいです。」
会社員生活を経て、ドラマや映画、情報番組、講演、出版など幅広く活躍。プライベートでは日本骨髄バンクやドイツ国際平和村、障がい者アートなどのボランティアを30年以上続けている。
・ドラァグクイーン ドリアン・ロロブリジーダさん
「自分の気持ちを大切にしながら、個性あふれる表現者たちと一緒に活動できることが幸せです。」
昭和59(1984)年生まれ。東京都出身。平成18(2006)年にドラァグクイーンとしてデビュー。各種イベントへの出演やMC、モデル業、映画や舞台、CM出演など活動は多岐にわたる。
◆障がいの有無をまぜこぜにしたプロの表現者集団
◇お二人の活動内容について教えてください。
東:本業は俳優とタレント業です。一般社団法人Get in touch(ゲットインタッチ)の代表も務めています。Get in touchでは、アート、音楽、映像、舞台などのエンターテインメントを通じて、人や団体、企業や行政などをつなぎ、誰も排除しない「まぜこぜの社会」を目指して活動しています。
ドリアン:私はステージでショーを披露したり、テレビ、ラジオ、映画などに出演したりしながら、世界に愛と笑顔をお届けしています。ドラァグクイーン※1との出会いは、高校3年生の時でした。お化粧を勉強したり、衣装を買ったりして、お客さまの前でパフォーマンスすることを始めたのが21歳の時です。それがとても楽しくて、今でも続けています。
※1 きらびやかなメイクや派手な衣装に身を包み、強い女性性をまとってパフォーマンスを披露する男性のこと。由来は諸説あり、一説によると長いドレスやガウンを引きずる様子(drag)が語源とされている。
◇「まぜこぜの社会」とは、どのようなイメージでしょうか。
東:たとえば、まぜご飯をイメージしてみてください。錦糸卵、塩ゆでのエビや絹さや、シイタケの甘煮など、食材の特性を生かして下ごしらえした具材を混ぜ合わせることでおいしくなりますよね。同じように、マイノリティーの特性に配慮する社会になれば、みんなが幸せになれるという意味が、「まぜこぜの社会」に込められています。活動の一つに、性の多様性が尊重される社会の実現を目指すための映画を制作・上映したり、学校の授業で活用できるDVDを無料配布したりしています。
◇「まぜこぜ一座」を結成した経緯について教えてください。
東:Get in touchの活動には、多様な特性のあるマイノリティーの表現者がたくさん参加しています。それぞれの得意分野を生かして舞台やファッションショーなどを開催していたところ、ある人から「毎回素晴らしいイベントですね。皆さんが一堂に会したら世界的なニュースになりますよ」と言われたことがありました。全盲のシンガーソングライター、義足や車いすのダンサー、ドラァグクイーンなどのキャストたちが特性を生かして舞台に立てば、観客の皆さんに「まぜこぜの社会」を体感していただける。さらには多くの人たちやメディアの注目を集めることができるかもしれない。そう考えて「まぜこぜ一座」を結成しました。
◆理解し合うことはできなくても、排除しないことが大切
◇令和5(2023)年3月には「まぜこぜ一座」の『歌雪姫と七人のこびとーず』が上演されました。印象に残っている出来事やエピソードがあればお聞かせください。
東:台本を作る時は毎回、マイノリティーの皆さんの表現や笑いの取り方などをたくさん勉強しなければいけません。表現者たちの特性を生かしつつ、お客さまに気付きや感動を受け取ってもらうためにはどうするべきか、常に葛藤しています。
ドリアン:本作品は、私にとって4度目の「まぜこぜ一座」での出演となりました。期間中は昼と夜の上演があり、たくさんのシーンに登場させていただいたこともあって、朝から晩まで常に着替えては演じての繰り返しで、過呼吸になるほど忙しかったです。作中に、インターネットやSNS上で中傷やうわさ話が広がっていくシーンがあるのですが、これは今の社会においても深刻なテーマだと思います。悪意のある言葉や、悪意がなくても誰かを傷つけてしまう言葉が数を重ねていくことで、人生や人の命までをも脅かしてしまう。そのような世界を私は望んでいません。エンターテインメントを通じて、このような現状に問題提起ができればと思いました。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>