―自らの体験を生かし、パラスポーツの魅力を伝える。―
■しぶや区ニュース×渋谷のラジオ 渋谷のラジオで出張インタビュー
渋谷区学びとスポーツ課パラスポーツ推進係に勤務しながら、シッティングバレーボールを続ける小方心緒吏さんに、パラスポーツの魅力について伺いました。
・渋谷区学びとスポーツ課パラスポーツ推進係、シッティングバレーボール元日本代表
小方心緒吏(おがたしおり)さん
「実際に競技を体験してみることでパラスポーツの魅力を知ってほしいです。」
[パラスポーツ シッティングバレーボールとは]
下肢などに障がいがある選手が座ってプレーするバレーボールです。コートサイズなどの違いはあるものの、基本的な競技ルールは一般のバレーボールとほとんど同じです。でん部を床につけたまま競技を行い、スピード感あふれるラリーやコンビネーションを駆使した戦略的な戦い方が魅力のパラスポーツです。
◆シッティングバレーボールとの出会い
◇シッティングバレーボールに出会ったきっかけを教えてください。
小方:小学5年生からバレーボールを始めたものの、中学3年生の時に右大腿骨肉腫を患い、飛んだり走ったりすることができなくなりました。入院中のとても落ち込んでいた時に、母の友人がシッティングバレーボールを勧めてくれたのですが、当時は「シッティングバレーボールはリハビリ目的でやる競技」という印象を持っていたので、あまり興味が湧きませんでした。
◇そこからどのようにして競技を始めることになったのでしょうか。
小方:母からも何度も勧められて、「そんなに勧めてくれるなら一度だけ」と約束して、高校1年生の秋に練習会場へ見学に行きました。義足が無造作に床に転がっている、これまで見たことのなかった光景に驚きましたが、それ以上に、プレー中の選手たちの動きが想像していたよりも素早くて圧倒されました。実際にやってみると、思っていたよりも自分がうまく動けず悔しかったですね。シッティングバレーボールには、私が求めていたバレーボールのスピード感やボールをつなげていく楽しさがあり、「この楽しさをもっと味わいたい」「もっと上手になりたい」という気持ちが込み上げてきて、本格的に競技を始めることにしました。
◇バレーボールとシッティングバレーボールの違いを教えてください。
小方:シッティングバレーボールはバレーボールよりもコートが小さく、ネットも低いのですが、座ってプレーすること以外はほとんど同じルールです。バレーボールは走ってボールを追いかけることができますが、シッティングバレーボールではそれができないので、より繊細なボールコントロールが必要な競技だと思います。
◆選手生活と家事や育児を両立した日々
◇日本代表として、これまでパラリンピックに3回出場(北京2008大会、ロンドン2012大会、東京2020大会)されましたが、直近の東京2020大会にはどのような思い出がありますか。
小方:当時はコロナ禍だったため、自分が感染してしまったらチームが試合に出られなくなってしまう怖さと共に日々を過ごしていました。大会は無観客試合となりましたが、ボランティアの皆さんをはじめ、周りの人たちがとても盛り上げてくださったので、楽しんでプレーすることができました。東京2020大会を通して、シッティングバレーボールがどのような競技なのか、これまで以上にたくさんの人に知っていただけたと思うので、これからは実際に競技を体験してもらいたいですね。国内大会では、健常者も障がい者も同じコートでプレーすることができ、これはシッティングバレーボールの特徴であり、魅力だと思います。
◇日本代表時代には、選手生活を続けながら仕事や家事、育児もされていたそうですね。どのように両立していたのでしょうか。
小方:日本代表チームは、2週間に一度、週末に兵庫県姫路市で合宿があり、それが生活の中心でした。平日は仕事が終わったら子どもを保育園に迎えに行き、帰ってからご飯を作り、お風呂に入れて寝かしつけたら残りの家事を片付けます。全てが終わったころには24時近くになっている日がほとんどでしたね。合宿がある土曜日と日曜日は夫に任せていました。日曜日の夜に帰るのですが、最初は子どもも帰りを待ってくれていたものの、だんだんと待たずに先に寝るようになりましたね(笑)。
◇出産や育児のために、選手生活を休んだ期間はありましたか。
小方:1人目を出産したロンドン2012大会後から、リオ2016大会までは、一時的に競技を離れていました。シッティングバレーボールはジャンプしたり走ったりすることがないため、膝への負担が少なく、選手生命が長い競技だと言われています。もともと復帰するつもりで休みましたが、それでも復帰直後は大変でしたね。2人目の子どもの夜泣きが多い時期で睡眠時間が少なくなる中、4年間のブランクを埋める必要がありました。
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