■第1回 紙幣の歴史と信頼の「顔」
令和6(2024)年7月3日、20年ぶりに新紙幣が発行されました。
現在日本で使われている紙幣は、正式には「日本銀行券」といいます。偽造防止の観点からおおむね20年ごとに改刷が行われ、最先端の偽造防止技術を盛り込み、肖像・デザインを一新します。今回新しい紙幣の「顔」に選ばれたのは、千円札に北里柴三郎、五千円札に津田梅子、一万円札に渋沢栄一。奇(く)しくも3人とも、港区と縁のある人物です。
日本の貨幣の歴史をみると、金属貨幣(硬貨)は7世紀の「富本銭(ふほんせん)」、8世紀の「和同開珎(わどうかいちん)」頃までさかのぼりますが、紙幣の登場はそれから千年の時を待ちます。江戸時代の「藩札」を経て、国として紙幣を発行するようになったのは明治政府から。初めは価値の下落等で定着せず、紙幣が信頼できる通貨として使用されるようになったのは、1882(明治15)年に日本銀行が設立され、貨幣価値の安定維持が保証されるようになってからです。こうして日本銀行から発行される日本銀行券が、現在につながる紙幣となりました。紙片が貨幣として流通するには、高い信頼性が大切なのです。その「顔」となる肖像も、こうした信用に裏打ちされる紙幣にふさわしい人々が選ばれます。
新紙幣の3人も、それぞれの分野で傑出した業績を残し、新たな産業の育成、ジェンダーにとらわれない教育の普及、科学の発展といった、日本の近代化をリードし未来につないだ人たちです。
その新しい顔となった3人について、次回から順に紹介していきます。
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