◆上武大学(上) 授業で“種まき”若者の裾野広げる
《2009年4月、群馬県の上武大学が看護学部の授業に絵手紙を導入。小池さんはこの年の12月、客員教授に就任する》
導入したのは理事長の澁谷朋子さん。1993年から僕の通信講座を受講して、絵手紙で心を通わせてきた愛弟子の一人です。
大学の授業に絵手紙を取り入れた時には驚いたね。僕は若い人は絵手紙に興味を持たないし、授業で教えるのはどうかな、と。長続きしないんじゃないか、と感じていた。
だから、客員教授の話があった時にも生返事をした。ただ、僕は大学中退だから大学教授への憧れもあった。それに大学建学の精神「雑草精神(あらくさだましい)」に心が動いた。絵手紙のモットー「ヘタでいい」と通じるからね。それで引き受けることにした。
《絵手紙授業は12年から全学部で開講。人気講義となり、受講生は17年に345人まで増える》
15回の授業は澁谷さんが自ら担当し、僕は「特別講義」として1回受け持った。
今の大学生は私語が多いとかスマホばかり見ているとか、言われているけど、僕の授業は逆にシーンとしていて反応がなかったんだ。話が伝わっていないな、とがっかりしていたら、意外にも学生たちの心に響いていたことがわかった。
なぜ、わかるかというとね、書いたはがきからなんだ。授業は澁谷さんの発案で、はがきの表の半分下に200字の文章を書かせている。裏に描いた絵や言葉についてなどがテーマで、その中に「絵手紙というものは、人の表れだと思う」とか、「筆一本で相手に伝える声となる」なんて書いてくる。心の内から湧き出てきた言葉に打たれた。
学生と粘り強く向き合ってきた澁谷さんのお陰で、感受性や表現力が豊かになり、僕の手が届かなかった若者たちに絵手紙の裾野が広がった。僕も“種まき”のお手伝いができてうれしいね。
《絵手紙は硬式野球部を皮切りに運動部にも広がる》
野球部の谷口英規監督が、絵手紙で大切な集中力を身につけてもらおうと、部員に勧めたと聞きました。その後、陸上や駅伝、サッカー部などでも取り組み、運動と文化が一つになっている。「文武両道」を若者たちが証明しようとしているね。
◆次回も上武大学との話を。
(聞き手 元新聞記者・佐藤清孝)
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