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【特集】人権週間記念対談(1)

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東京都目黒区

■誰もが自分らしく生きられる インクルーシブな社会をめざそう!
障害の有無や性別、性的指向・性自認、国籍、年齢など、それぞれが持つ多様な違いを認め合い、誰一人排除されることなく共に生きる社会を「インクルーシブ社会」と言います。そして、そんな社会への転換が今こそ求められています。
手足に障害がある当事者として障害と社会との関係を研究する熊谷氏に、どうすれば一人一人が生きやすい生き方を選択できる社会となるのかを、LGBTQ関連の支援を行っている渡邉氏が聞き手となって話を伺いました。

対談を収録した動画「世界人権宣言75周年・人権週間記念トークセッション2023」は、区Webから、6年3月31日までご覧になれます。

■NPO法人共生社会をつくる性的マイノリティ支援全国ネットワーク副代表理事・公認心理師
渡邉歩(わたなべあゆむ)氏
LGBTQに関しての研究と相談支援、居場所づくりに携わりながら、啓発や講演などの活動を行っている。

■東京大学先端科学技術研究センター准教授・小児科医
熊谷晋一郎(くまがやしんいちろう)氏
新生児仮死の後遺症で脳性まひになり、手足が不自由となる。東京大学卒業後、小児科医となり、現在は同研究センターの准教授として研究に従事しながら、月1回の病院勤務も行っている。

Q:熊谷先生が当事者研究を始めたキッカケを教えてください
A:子どもの頃から、生きやすさについて考えてきました。幼少期は、健常で平均的な体に近付くことが幸せだと信じられていたため、過酷なリハビリを経験し、子ども心に自分を否定されているような感覚を抱いていました。しかし、80年代に入り、障害は個人の特性ではなく、社会環境の側にあるとする社会モデルの考え方が広まりました。そこで救われた原体験があったことから、生きやすい社会の実現には、専門家だけでなく当事者の生きる知恵や考え方も必要だと気付き、両者の連携不足を解消するために当事者研究を始めました。

キーワード1:当事者研究
障害や病気等の困りごとを持つ本人が仲間の力を借りながら、症状や生活上の苦労など自らの困りごとを研究する取り組み。

Q:当事者研究ではどのようなことに取り組んでいるのですか
A:当事者が研究者となって当事者のニーズに焦点を当て、従来の研究者と対等な関係を築きながら、革新的な知識を生み出すことに取り組んでいますが、対等性を実現するのは容易ではありません。しかし、マジョリティだと自認する専門家も、自分もマイノリティかもしれないと感じる瞬間はありえます。誰もが困難な状況に陥った時に直面する地続きの問題なのだという共有の認識があれば、マジョリティとマイノリティの境界を越えられるはずです。双方が当事者であり研究者であるという共通の立場になって、初めて共同が実現するというのがテーマです。

キーワード2:マジョリティとマイノリティ
マジョリティは多数派、マイノリティは少数派のこと。人数に限らず、マイノリティはその集団に属していることで差別や偏見の対象になるなど、制度の不備から損失や被害を受ける立場の人たちも指す。

Q:マイノリティが抱える悩みをどのように解決していくべきですか
A:身体的な障害のある人が生活する上で困ることを例に挙げると、建物や設備が彼らのニーズを無視した設計になっているなど、社会的な価値観や慣習は健常者中心であることです。健常者の当たり前が障害のある人にとって大きな障壁となり、社会への参加を妨げています。それらを改善しようとしても「みんな、我慢している。なぜマイノリティだけが声を上げるのか」というムードを感じるといいます。マジョリティとマイノリティの違いはあれど、困っている当事者ということでは一緒。我慢しなければならないという前提を一緒に覆し、誰もが困っている時は「困っている」と言える環境を作り上げることが、インクルーシブの促進につながります。

熊谷先生「私もあなたも、みんなが生きづらさを抱えていることを認識し、共に世の中を変えていく。その仲間を増やしていくことが重要なのです」

Q:多様な価値観を受け入れる社会になるためには何が必要ですか
A:圧倒的な多数派の生活が当たり前とされる中、同じように生きようと苦しんでいる人は少なくありません。ところが、人は突如としてそうした生活に違和感を持ち、価値観を見つめ直して、異なる豊かさや楽しさを見いだすことがあります。最近注目されている「医師患者コンコーダンス効果」が解決の鍵になるかもしれません。医療を受ける際、LGBTQや障害など、同じ背景を持つ医療者が担当すると、患者の満足度が向上し、予後の改善もみられるという効果です。つまり、あらゆる公的サービスは、受け手の多様性に匹敵する与え手の多様性が必要なのです。特に学校や幼稚園の先生など、子どもたちが人生の最初に出会う大人は、多様であるべきです。

熊谷先生「異なる価値観を受け入れる準備は、子どもたちが生き抜いていく重要な知恵につながります」

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