そばにいる、あなただから気がつけるコト。
そばにいる、あなただから届くコトバ。
都の自殺者数は、令和2年以降、増加傾向にあります。区の令和5年の自殺者数は29人でした。
9月は東京都自殺対策強化月間。あなたの周りにも悩みを抱えている人がいるかもしれません。今号では、身近な人の力になりたいと思った時、よりよく寄り添える方法を紹介します。
■あなたのすぐそばで起こっているかもしれません
5年の全国の自殺者数は21,837人、自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は全国17.41、東京都17.63です。区の自殺者数を見ると少ないように思えるかもしれませんが、決して人ごとではありません。
背景には、精神保健上の問題をはじめ、過労、生活困窮、育児や介護疲れなどさまざまな社会的要因が複雑に絡み合っています。
家族や職場の同僚など身近な人のサインに気付いた時は、寄り添うことが第一歩です。私たち一人一人が命の大切さの理解を深め、自殺を考えている人のサインに気付き、自殺を未然に防ぐことが大切です。
自殺者数と自殺死亡率の推移
出典:厚生労働省ホームページ 地域における自殺の基礎資料
■身近な人が悩んでいる時、私たちはどうしたらいいのでしょうか?
家族や友人、知人の様子が普段と違う、落ち込んでいるような時、「ちょっと心配だな」と思ったら力になりたいと思うのではないでしょうか。「でも、どうするのがいいか分からない」とためらってしまうこともあるかもしれません。
今号では、精神保健福祉士の東原絵理さんに、自殺を考えているかもしれない人への寄り添い方を伺いました。
◇東原 絵理さん
NPO法人OVA
クライシスサポート部
コンサルタント・精神保健福祉士
■気づく
「落ち込んでいる」「体調が悪そう」「集中力が続かなくなっている」などのSOSサインに気付く
Q:深く悩んでいる人に気付くきっかけ(SOSサイン)などはありますか?
A:今までできていたことができなくなる、できる度合いが下がってくるなどの変化が見られます
深く悩むようなことがあると、だんだん気力が湧かなくなってきたり、気分が落ち込んだり、今までできていたようなことができなくなる、できる度合いが下がることがあります。
LINEの返信が遅くなった、なんとなく元気がないように見えるなど、普段の関わりの中で見える行動の変化をSOSのサインと捉えられると気付きにつながっていくでしょう。
ささいな変化に「あれ?いつもと違うな、何かあったのかな?」という寄り添える視点をまずは持つことができればいいと思います。
Q:「実はこんな場合でも悩みが潜んでいるよ」というケースはありますか?
A:周りの人には一見幸せに思えることでも、本人にとっては大きな悩みだったりすることがあります
例えば結婚や出産、昇進など、周囲から見て一般的には喜ばしいことでも、本人にとっては新しい環境の変化に適応していく過程で大きなストレスがかかることもあります。
Q:身近に悩んでいる人がいたら助けたいと思いますが、自分の考えすぎかもしれないなど、判断に迷った時はどうしたらいいですか?
A:勘違いかもしれないと思っても、まずは気軽に声をかけることが大切です
声をかける時は、何かあったという前提で話を聞くのではなく、「いつもと違うように見えるけど、何かあったの」という近しい人から見える変化をまずは伝えられるといいでしょう。
Q:声をかける時に気を付けることはありますか?
A:声をかけられた相手が落ち着いて受け止められるような手段や方法を選択できるといいと思います
家族以外の友人や同僚では、なかなかプライベートな空間で話をしにくい場合があるでしょう。声をかける相手が戸惑わないような時間や場所を意識できるといいと思います。
また、対面だと打ち明けられないと思うかたもいます。LINEや電話などをきっかけにするのもありでしょう。
■傾聴する
声をかけ、じっくりと耳を傾けて聞く
Q:悩みを打ち明けてくれた際、言ってはいけないことはありますか?
A:まずは、否定をするような言葉や自分の意見は言わずに、ありのままを受け止めるように接しましょう
打ち明けてくれた段階では否定するような言葉はいったん見送りましょう。なかには思い悩むあまり、社会通念上や倫理的に良しとされないことを考えてしまっているかたもいるかもしれませんが、ぐっとのみこんで、相手の話をそのまま受け止めましょう。
「話さなければよかったな」と思わせない対応が一番大切です。
Q:声をかけたけれど拒絶された時は、どう接したらいいでしょうか?
A:まずは、相手の気持ちを受け止めて、そっと見守るなど今までどおりに接しましょう
きっと話したくない事情や心情があるのでしょう。打ち明けることも、「ほっといて」と拒絶を伝えるのも勇気がいることだと思います。そのような時は、受け止めてそっと見守れるといいですね。
できそうだったら、「話したくなった時にいつでも話してね」「待っているよ」というメッセージを伝えられるといいと思います。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>