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自治体の皆さまへ

国際交流員ウィルペルトのコラム

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栃木県下野市

私たちがここにいて、大声を出しているのは、あなたたちが私たちの未来を奪おうとしているからだ
Wir sind hier, wir sind laut, weil ihr uns die Zukunft klaut!
(ウィア ズィンドゥ ヒア ウィア ズィンドゥ ラウトゥ ワイル イア ウンス ディー ツークンフトゥ クラウトゥ)

2023年は記録的な年でしたね。世界中で観測史上最も暑い年となり、5月から6月にかけてヨーロッパ各地で森林火災が発生しました。ドイツでも、ブランデンブルク州で記録に残る中で最大の森林火災があり、鎮火に2週間を要しました。一方、オーストリア、イタリア、クロアチアは5月に洪水に見舞われました。洪水は、9月にはギリシャ、ブルガリア、トルコも襲いました。ドイツは、平均的に暑すぎたのと、7月から8月にかけて雨が続いただけで済みました。しかし、そんなドイツも、ポツダム気候影響研究所の報告によると、例年に比べてすでに平均気温が2度高くなっており、冬も顕著に短くなっています。
異常気象がますます深刻化する中、ドイツ人はどのように対応しているのでしょうか?
まず、ドイツの政府から見てみましょう。ドイツ政府は、近年、重要な文書を発表しました。ちょうど4年前、Klimaschutzgesetz(クリマシュッツゲゼッツ)(気候保護法)を可決し、その中で2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年に比べて55%削減することを義務付け、分野別(建設、交通など)の年間排出量を通じて削減の道筋を定義しました。
しかし、多くのドイツ人、特に若者にとって、これは環境問題への十分な取り組みとは映りませんでした。彼らは様々な方法で抗議の意を表しています。環境運動はそのひとつで、マスコミでもよく取り上げられています。世界中に広がったFridays for Future(FFF)「未来のための金曜日」は、もともとスウェーデンのグレタ・トゥーンベリが始めた抗議活動(国会の前で気候保護を求めて抗議を行うため、金曜日に学校を休んだ)で、ドイツでも大きな賛同を呼び、社会的に大きな成功をおさめました。
ドイツのFFFの中心人物は1996年生まれのルイザ・ノイバウアーです。彼女は過去5年間、数多くのテレビ討論に出演し、他の140万人の若いFFFデモ参加者とともに、気候保護がドイツの社会と政府の重要なテーマとなることを確実にしました。
ドイツのFFFの具体的な目標は、
・2035年までにドイツの温室効果ガスの排出量を正味ゼロにすること
・2030年までに脱石炭を実施すること(脱原発は2023年4月に完了)
・2035年までに100%再生可能エネルギーによるエネルギー供給を実現すること
また、化石燃料への補助金の即時廃止や、ドイツの全石炭火力発電所の4分の1の即時停止、そして将来の世代の負担を補償するため、地球温暖化の結果予想されるコストに相当する額の炭素税の導入も求めています。
生徒たちによる抗議から始まったこの運動は大きく広がり、ドイツでは「未来のための金曜日」以外にも「未来のためのおばあちゃんたち」や「未来のための両親」、「未来のための」科学者・教師・企業家・大学生など、同じ目標をもつグループがたくさん立ち上がりました。彼らは大規模な抗議運動を通して、気候保護に賛同する社会的コンセンサスを獲得しました。
「未来のための…」以外にも、気候保護を求めて活動する団体があります。2021年に結成されたLetzte Generation(レッツト ゲネラツィオン)(最後の世代)ことKlimakleber(クリマクレーバー)(気候接着者たち)はその1つです。名前が示すとおり、彼らは、地球の気候変動の転換点(ティッピングポイント)が差し迫っている深刻さについて考え、自分たちが地球の完全な崩壊を阻止できる最後の世代であると思っています。そのため、Letzte Generation(LG)はデモやスピーチだけではなく、非暴力の「市民的不服従」の手段を通じて、ドイツ政府にパリ協定と1.5度目標を遵守させることを目的としています。LGは「市民的不服従」を望ましい手段だと考えてはいませんが、自分たちの行動が「社会的転換点」となり、多くの人々が気候保護の目標に連帯して、政治家に気候保護を要求するようになることを望んでいます。
では、その非暴力的な「市民的不服従」とはどのようなものか、ドイツの政府がどのようにして気候保護法の強化を余儀なくされたかなどについては、次回書きます。

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