■民俗部会調査速報(12)~ワラホウデン~
大晦日の朝、滝沢のあるお宅では不動の滝のほとりにワラホウデンを3つ立てます。ワラホウデンとは、束にした藁を折り返して縄でくくり、根元をひらいて円錐形に立てたものです。なかには御幣(ごへい)を立て、細かく切った餅と米、煮干しをお供えしていることから、正月にやってくる神さまをおもてなしするために作られたと考えられています。不動の滝を見渡せるところにふたつ、かつて氏神さまがあったところにひとつ作られ、水の神さまや田の神さま、氏神さまをおまつりしています。同じ滝沢にある別のお宅の氏神さまにも大晦日に8つものワラホウデンがならびます。こちらは白い御幣が7つ、ひとつだけが赤い御幣です。赤い御幣はお稲荷さまをおまつりするものだそうです。
須賀川、大輪などでも同じようにワラホウデンが作られたと伝えられています。これらは正月に訪れる神さまをおまつりするためだけでなく、かつては盆や祭礼、苗代(なわしろ)シメ(苗代作りが終わった日)にも作られました。ワラホウデンは、神さまを清らかな所にお迎えするために、行事や祭礼のたびに新しく藁で作りかえた祠(ほこら)であると考えられます。
私たちのご先祖の丁寧な暮らしぶりが感じられる風習です。大田原市には古くからこのような美しい民俗文化がたくさん伝えられています。
(民俗部会 筒江薫)
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