■観光客の「新しい扉」を開くガイドを…
ネイチャーガイド(奥日光小西ホテル)
安倍 輝行(あべてるゆき)さん
今年のG7開催で盛り上がった奥日光。ところで、皆さんは、冬の奥日光に行ったことはありますか。今回は、奥日光のネイチャーガイドとして、冬の楽しみ方をよく知る安倍輝行さんに話を伺いました。
Q:これまでの経歴は?
新潟県で生まれた後、6歳から大学卒業まで埼玉県で過ごしました。日光湯元ビジターセンターで勤務した後、一度日光を離れましたが、再び日光に戻ってきて、2008年から現在まで、奥日光小西ホテル所属でガイドなどを行っています。
Q:ガイドを志したきっかけは?
高校の通学路にあった雑木林で、よく昼寝をしていました。大学生になり久しぶりに、そこで横になってみると、前のような静かさがなくなっていました。周辺の開発が進んでいたんですね。そのときに漠然と「嫌だな」と感じたのが原体験です。
それから、自然を目の前にし、お客様と直接話をして自然の大切さを一緒に感じて伝えられる「ネイチャーガイド」という職業が良いなと思うようになりました。
Q:業務内容は?
主に、3つあります。1つ目はガイド業とその準備としてのフィールドワーク。2つ目は、ホテルのフロントで接客しつつ、周辺観光のプランニングなどのコンシェルジュです。3つ目は、情報発信として、「今週の見所」というペーパーを定期的に作成し、周辺の旅館や売店などの事業者や観光客へ配布しています。
Q:仕事の魅力は?
ガイドは、オーダーメイドで、お客様の希望や特性に応じて行っています。日光の自然を実際に見て感じてもらうことも大切ですが、環境や景観の問題なども共有し、お客様に考えてもらうことも意識しています。
また、情報発信については、業務に忙しくリアルタイムの観光情報を知る機会が少ない観光事業者への情報共有の意味もあります。それが、ホスピタリティ向上など地域の底上げになっていくと考えています。
Q:印象に残ったガイドは?
アクティブな女性の「インドアな恋人と一緒に雪山で遊びたい」というオーダーに応えたガイドです。男性は気の進まない様子で参加していましたが、そのガイドでアウトドアの楽しさを知ってもらえたようでした。それから何度も奥日光で再会しますが、その度にお二人の装備が整っていて、「きっかけをつくれたんだな」とうれしく思います。
Q:奥日光の好きな点は?
箱庭的で多様な環境が広がっているところです。針葉樹林、広葉樹林、湖、滝、高原、湿原など、ちょっと歩くだけで景色が変わります。漠然と感じる「日本らしい四季」のイメージをそのまま感じられます。
また、冬は雪に閉ざされると思われがちですが、冬装備があればアクセスにも問題がありません。新雪の上を歩いたり、静寂(せいじゃく)の世界に動物の命を感じたりできます。スノーシューやクロスカントリーなどは、体中で奥日光の冬を楽しめますよ。
Q:今後の目標は?
「結ぶ」ことをテーマにしたいです。私のガイドがきっかけで、お客様の物の見え方が変わるように、新しい世界と結ぶ、その扉を開けたらと思います。また、「インタプリター(通訳者)」として、観光の情報や思いを地域全体でつないでいけるようなパイプ役を目指したいです。
◆インタビューを終えて
奥日光の自然を愛する安倍さん。この自然を前にすると、誰もが「気持ちが開いて、よく観て、聴いて、考えてくれる」と語っていたのが印象的でした。私も、この冬は奥日光に足を運んで、五感で楽しみたいです。
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