■あなたは最近、本を読みましたか?
スマートフォンやゲーム機などで楽しめる、本以外の娯楽にあふれている現代、全年代の読書時間低下が問題視されています。
ここ10年の、市立図書館利用者数や、図書貸出冊数の推移(図1、2参照)を見てみると、令和2・3年度のコロナ禍で、どちらも大きく数値を落としていて、令和4年度でもコロナ禍前の数値まで回復していないことがわかります。
「本を読まなくてもSNSからたくさんの情報を得られる」そう思う方も多いと思います。でも、そんな中で、なぜ本は無くならないのでしょうか。今だからこそ、本や読書の魅力を再発見してみませんか。今までのイメージと少し違う、読書や図書館の在り方を紹介します。
図1:市立図書館利用者数(延べ人数)の推移
図2:図書貸出冊数の推移
■1.読書のプロ、図書館司書からのすゝめ。
市内図書館で働く司書の2人に、本や読書、図書館について話を聞きました。
〇藤原図書館長
星 雅樹(ほしまさき)さん
図書館員歴11年
わたしの一冊…「エソンくんきしゃにのる」スズキコージ/作
〇今市図書館司書
関根(せきね) ゆり子(こ)さん
図書館員歴11年
わたしの一冊…「プラナリア」山本文緒(やまもとふみお)/著
【memo】
司書:図書館などで資料を収集・整理・保存し、情報などを提供したり、資料を求める人の手助けをしたりする人のこと
◆その日の気分で、音楽をかけて
関根:私は幼い頃1人で過ごす時間が多く、よく本を読んでいました。そこから読書にハマり、書店でアルバイトもしていました。以前は事務職でしたが、結婚を機に大好きな本に携われるこの仕事に転職しました。
星:関根さんは司書の優等生ですね!私は今でも本を読むのが遅いですし、読書にハマっていないんですよ。俳句や書道、音楽などの趣味があるのですが、趣味について知りたいことが出てきたときに、本を探して読んでいます。おもしろい本があったら、ジャンルや著者などから派生して次の本を買っていきます。あれ…これは読書にハマっているのかな…(笑)。
関根:それはハマってますね(笑)。私はネットで口コミを見て本を買ったり、書店で表紙だけを見て買ったりもします。楽しい気分のときには楽しい本を、落ち込んでいるときには暗めの本と、そのときの気分に寄り添ってくれる本を読みます。星さんはどんな空間で読書していますか?
星:図書館はもちろん、喫茶店でも。最近のおすすめは、家でリクライニングソファの背もたれを倒し、ジャズやクラシックなどの音楽を流しながらの読書です。とてもリラックスできますよ。
◆厳格だった図書館の変化
関根:私のおすすめは、市内各図書館にある「親子読書室」です。子どもが一緒だと、静かなイメージのある図書館から遠ざかりがちですが、親子読書室は一般書架と少し離れたところにあるので、子どもが少し騒いでも安心です。赤ちゃん向けの本も並んでいるので、赤ちゃん連れの方にもおすすめです。
星:たしかに、ひと昔前の図書館は、厳格な場所だったけれど、今は「くつろげる、気さくな場」に変わってきています。
関根:図書館は、ただ本を借りるだけの場所ではなく、人と人がつながる、コミュニティづくりの場にもなっていますよね。例えば、赤ちゃん向けおはなし会のイベントで、顔見知りになった親御さん同士が自己紹介して、育児相談にまで話が及ぶこともあります。
◆人類にとって図書館は宝物。
星:私は世の中で一番多くものを知れるのは図書館だと思っています。「ノアの箱舟に図書館が一つでも残っていたら、人類はやり直せる」と思うくらい、人類にとって図書館は宝物なんだと思います。
関根:さ、さすがです! 市民の方にもっともっと、図書館を利用してほしいですね。
星:そうですね。そして、もっと図書館のシステムを知ってほしいなぁ。図書館の本の背表紙に振ってある番号は、ジャンルごとに割り振られた全国共通のもので、好きなジャンルの番号を覚えておけば、成長に伴ってより高度な本に進むことができます。生涯学習として利用しやすい仕組みです。
関根:地元のことを調べたいときに、ぜひ図書館を活用してほしいです。今市図書館は二宮尊徳、日光図書館は二社一寺、藤原図書館はイザベラ・バードの資料や鬼怒川温泉の歴史についてなど、各館それぞれにしか置いてない本もあります。
◆2人にとって「読書」とは
関根:「日常」です。世界には文字があふれていて、新聞の記事一つを読むのも、子どもに読み聞かせをするのも、立派な読書です。
星:「知ること」です。自分で考えているだけではわからないこと、見えてこないこと、たくさんの知恵が本にはあります。人間にとって読書は趣味ではなく、食事や睡眠と同じように、欠かせないものだと思います。
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