■地域への愛情、一皿に込めて。
Girouette ジルエット
シェフ 福井 慎之助(ふくいしんのすけ)さん
世界遺産「日光の社寺」の門前町にたたずむレストラン「ジルエット」。地元の食材をふんだんに使った多彩な料理は、多くの地元住民や観光客の心を引き付けてやみません。今回は、シェフの福井さんに料理に傾ける情熱や、地域への思いを伺いました。
◆料理で笑顔が原点
幼い頃から、食肉や鶏卵の小売りなどを手がけている両親の背中を見て育ちました。それもあってか、料理にはずっと関心がありました。料理人の道を選んだ大きなきっかけとなったのが、高校3年生の夏休みにホテル内のフードコートでアルバイトをしたことです。その時、同僚から「助かったよ」などと、感謝の言葉をかけてもらったことが、当時は学生だった自分にとってすごく衝撃的でした。「自分が好きな料理に携わる仕事を通じて、誰かを喜ばせることができるんだ」と感動し、将来は料理人になると決めた忘れられない出来事です。
◆料理人像を探る
高校を卒業後は東京の専門学校で料理のイロハを学び、都内の西洋料理店で3年勤務しました。その後、縁あってフランスの2つ星レストランで働けたことが、料理人としての幅を広げる貴重な経験になりました。
このレストランで強く印象に残ったのがお店と地域の強いつながりです。地域の特産品を使った料理が提供され、新鮮な野菜を納品しに来る生産者の姿が当たり前のようにあるなど、自分が理想とするお店の姿に近いものがありました。1年ほどで帰国し、再び東京のレストランで経験を積み重ね、令和3年7月にジルエットをオープンさせました。
◆農家の思い胸に
オープンに向けては、コロナ禍でも一緒になって頑張ってくれる農家さんたちに会って食材を探したり、料理の試作に取り組んだりしていました。「コロナ禍でも絶対にジルエットを開店させます」「お店をはやらせて皆さんの野菜を使います」―。生産者さんに希望を持ってもらおうと、そう言い続けてきました。
7月14日にジルエットはオープンから3周年を迎えました。まだ3年という感覚ですが、ジルエットを目的に日光に来てくれる観光客が少しずつ増えていて、地元に貢献できているのかなと感じています。おいしい料理を提供することはもちろん、生産者さんが丹精込めた食材の魅力を広く発信していきたいです。お客さんの中には、食材として使っている野菜を買いたいという方もいます。そうした瞬間が一番うれしいですね。
◆人と地域の懸け橋に
昨年11月には農家さんと協力して、地域活性化イベント「日光ファーマーズマルシェ」を初開催しました。「日光の地元の皆さんの新しい台所になれば」との思いを込め、野菜販売のほか、農家同士や来場者の交流の場も提供しました。お店以外にも、こうした地域の盛り上がりにつながる活動にも力を入れていきたいです。
お店や自分の存在はあくまでも中間地点。最終的に生産者とお客さん、地域同士がつながれるような橋渡し役になりたいです。今後の目標は日光の人全員に料理を食べてもらい、日光の魅力を再発見してもらうこと。そしてそこから生まれる感動が観光客など多くの人に波及していく。その先に日光が盛り上がっていく未来があると信じています。
■インタビューを終えて
市が進めるチョコレートのプロジェクト「CHOCOTTO NIKKO」にも肉料理で参加している福井さん。「農家さんや地域の活性化が大事」と語るその言葉は、地元への熱意にあふれていました。そんな福井さん渾身(こんしん)の料理、あなたも一度味わってみませんか。
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