足利市長 早川尚秀
■地方自治体と人口問題(1)
去る4月下旬に、ある民間団体が『消滅可能性自治体』を公表しました。根拠としては、国立社会保障・人口問題研究所が行った2020年から2050年までの若年女性(20~39歳女性)に関する人口減少の予測結果を踏まえた上で、『自治体間の人口移動がなく、出生と死亡だけの要因で人口が変化すると仮定した人口推計』と『自治体間の人口移動傾向が一定程度続くと仮定した人口推計』に基づき分析したとのことです。
本市は『消滅可能性自治体』の区分には入りませんでしたが、ここに分類された自治体からはさまざまな反応があります。複雑な心境を吐露(とろ)する県内首長もいました。
このようにセンセーショナルな名前を付けて発表することで、我々地方自治体の危機感を促すという狙いもあるのかもしれませんが、この提言は本来であれば国に向けて行うべきことではないかと感じています。人口減少は地方自治体だけの問題ではなく、日本の社会全体に共通する課題であり、国の政策として取り組まなければ解決に至らないのではないでしょうか。
立地条件も交通網も地域資源も異なる中で、どの地方自治体も強い危機感を持って努力しています。東京都だけが努力しているから人口が増えているのではないはずです。また、東京都だけ、大都市だけ残ればいいと思っている人は少ないと思います。しかし現実は、東京一極集中はますます加速しており、他の自治体から人や企業が集まり、それに伴い財源が確保され、住民サービスも拡充されます。
この流れは地方自治体の力だけで変えられるものではありません。例えば、産業分野において、産業の国内回帰を進め、外国企業も誘致し、同時に地方移転を進めるという考えを、省庁間で統一し、国を挙げて推進する。そのための規制緩和や支援制度を講じていく、ということを国全体で考えるきっかけとして、こういった提言が行われるべきではないでしょうか。
地方のまちにはそれぞれ素晴らしい歴史や文化、伝統があります。これらを未来へと残していかなければならないと感じています。
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