■時代を超えて受け継がれてきた伝統
那須町で200年以上前から作られ、受け継がれてきた「篠工芸」。寒冷地である那須高原では、古くから自生している笹の一種である「シノダケ」を使った生活用品作りが盛んでした。丈夫でしなやかなシノを使った製品は、軽くて使いやすく、耐久性に優れています。また、編み込む過程で底の四隅に4つの足ができるという特徴があり、通気性にも優れています。シノを使った工芸品は全国的にとても珍しいともいわれています。
■人々の日常に密着し生活を豊かにしてきた
篠工芸には、農業用品や台所用品などの日用品として使われていたものが多く、一升ザル、三升ザル、みそこしざる、肥ざる、梅ざる、メカイ、ハケゴ、そして花カゴといった製品が作られてきました。通気性に優れていることから、果物入れや園芸用品、また各種インテリアとしても利用できます。
用途に応じてさまざまな大きさ・形の製品が作られてきたことからも、篠工芸は、那須で暮らす人々の日常生活の中で当たり前のように使用され、日々の生活を豊かなものにする大切な道具であったことがわかります。
■高齢化と後継者不足
那須の篠工芸は、平成17年に栃木県の伝統工芸品に指定され、これまでにその技を伝承する6人の作り手が、県の伝統工芸士に認定されました。現在は、平山一二三さん(一ツ樅)のみとなり、伝統工芸士としてさらなる技術の向上と、後継者育成・継承に尽力されています。
昔は、農家の副業として篠工芸品が製作され、昭和45年頃までは、大沢、深堀、池田、一ツ樅、半俵、北条、小島などの地区に200戸ほどの生産農家と20人ほどの専業者がいて、業者が買い付けに来るなど、よく売れたといいます。しかし、プラスチック製品や安価な輸入竹製品などに押されて需要が減り、その作り手は大きく減少してしまいました。現在、伝統工芸士のほかにも作り手はいますが、高齢化が進み、後継者の確保が急務となっています。
■採取場所の減少
また、時代とともにシノを採取する場所も減少してきました。材料となるシノは、春に生えたものを11月から翌年の3月までに刈り取って使用します。1年目のシノは新鮮で柔らかく加工に適しており、素材本来の良さを生かすことができるのです。
このような上質なシノを手に入れるには、余分なシノを刈り取るなどの定期的な整備が必要ですが、とても労力のいるこの作業は、高齢化や後継者不足の影響により、継続が難しい状況にあります。
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