■県認定の伝統工芸士 平山一二三さん(90歳)
農業を営む傍ら、貴重な収入源として、シノでざるや籠を作る両親のもと育った平山さん。生活のためにと、暇さえあれば編む両親を手伝うために、見様見真似で作り始めて60年以上になります。当時は、近所に多くの作り手がいましたが、現在は平山さんのみ。そのような現状から11年前に始まった町工芸振興会による後継者育成事業では、講師として担い手の育成に尽力されました。「かわいい弟子たちが、一生懸命頑張っているから安心だよ」と、篠工芸の技術がこれまで人から人へ伝わってきたように、少しずつ新たな作り手に受け継がれていく状況に、安堵の表情を浮かべました。
■保存・継承への取り組み
那須の篠工芸を知ってもらおうと、篠工芸育成会では例年6月に公民館主催の篠工芸教室を開催しており、今年度も多くの方にご参加いただきました。
また、毎年9月から講習会を行っており、一緒に活動してくれる方を6月〜8月に募集しています。今年度行った公民館での教室に参加した5名の方が、11期生として引き続き篠工芸育成会で学んでいます。
講師は、会員7名が務めており、現在は11期生を含む実習生15人の育成に取り組んでいます。
講習は、初級・中級・上級の3部門に分かれ、さまざまな種類のざるの編み方を、各級9月〜翌年8月の1年かけて学びます。4年目になると、課題作品(メカイ、米とぎざる、うどん揚げざる)を製作し技術を身につけた方が、工芸振興会の会員として、友愛の森工芸館で自身独自の作品を販売することができるようになります。講習で技術を学んだ方の中には、個人で独立したり、会員として教室を開いたりなど、多方面で活躍されている方もいます。
講師を務める篠工芸部長は「篠細工は那須町の文化そのものです。私たちはこの温もりのある作品の伝統の技を受け継ぎ、大切にして、”作る喜び・使う楽しみ”を合言葉にいそしんでおります」と持続可能な活動の意義を話しました。
■伝統工芸を守るために私たちができること
多くの方が、伝統を守るために大切なこととして「後継者の育成」を真っ先に思い浮かべますが、それだけでは後継者は育ちません。この伝統を未来につなげていくためには、地域の理解や応援、作り手が気持ちよく製作できる環境の整備がとても重要です。
今後の伝統工芸の振興について、那須町工芸振興会の野島千尋会長は「篠工芸の伝統や技術を学び、次の世代に継承していくのは大切なことですが、同時に、現代の生活で必要とされる製品を作っていくことも大切です。工芸振興会としては、作り手の裾野を広げるとともに、篠工芸の製品開発も重視したいと思っています」と伝統技術の保存・継承への熱い思いを語りました。
◎篠工芸に興味がある方、篠刈り場の情報がある方は、ぜひご連絡ください。
問合せ:那須町友愛の森工芸振興会(道の駅那須高原友愛の森工芸館内)
【電話】78-1185
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