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佐川美術館アートコラム(74)

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滋賀県守山市

Black Rock「黒い巌(いわお)茶碗(わん)」

佐川美術館
学芸員:松山早紀子(まつやまさきこ)

現在、樂吉左衞門(らくきちざえもん)館では、巌のような黒い樂茶碗と墨画を展観しています。
樂吉左衞門館では、平成21年から毎年「吉左衞門X」というシリーズで、樂直入(じきにゅう)(十五代樂吉左衞門)と思惟(しい)を共有する作家、あるいは事象とのコラボレーション展を開催してきました。今年度は、江戸時代後期に活躍した文人画家、琴士として知られる浦上玉堂(うらかみぎょくどう)(1745-1820)の墨画とのコラボレーション展です。
玉堂の影響をうけて制作された樂茶碗の特徴の一つは「手捏(づく)ねによる原形を作る工程で、手びねりの紐(ひも)造りを取り込んだ技法」。もう一つは「櫛(くし)目状の篦(へら)による櫛削り、横斜めに走る櫛目状の溝・篦跡」。後者は構造そのものをある意味なぎ倒してゆく風、嵐のようなものであると作家自身が語っていますが、いずれも直入が玉堂を見つめる中で、玉堂の世界に深く入り込んで制作した新作樂茶碗です。
胎土(たいど)(茶碗を制作する際に使用された土)には、樂家に代々伝わる樂家の土や聚楽(じゅらく)土ではなく、薬師寺東塔の基壇の土を使用しています。釉薬(ゆうやく)は、泥鴨(どろかも)(京都の加茂川石の砕石くず)、南アフリカのナミビア土、コバルト、クロムなどを使用しています。
リズミカルな筆致と繊細な渇筆(かっぴつ)とを駆使した玉堂作品と、新たな直入の表現がうかがえる樂茶碗の数々を、ぜひご鑑賞ください。

※開館情報につきましては、ホームページでご確認いただくか電話〔【電話】585-7800〕でお問い合わせください。

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