「食育の環」とは、生産から食卓までの「食べ物の循環」、子どもから高齢者、そして次世代へつないでいく「生涯にわたる食の営みの循環」を示します。食育は、豊かな自然や受け継がれてきた食文化などと密接な関係を持つだけでなく、地域とのつながりにも関連しています。
今回は、食育について学んでいきましょう。
■食べる力=生きる力
高齢化が進む中で「健康寿命の延伸」は大きな課題です。健全な心身を培い、豊かな人間性を育むためには、乳幼児から高齢者まで生涯を通した食育が大切です。
「食べる力」には、食事を通して「心と身体の健康を維持できること」や「食事の重要性や楽しさを理解すること」、「食材を選択し、食事づくりができること」、「家族や仲間と一緒に食べる楽しみを味わうこと」、「食べ物の生産過程を知り、感謝する気持ちを持つこと」などがあります。これらは、子どもの頃から家庭や学校、地域などさまざまな場所で学び、身に付け、大人になってからも生涯にわたって実践し、育み続けていくものです。さらに、そうした食の知識や経験、日本の食文化などを「次世代に伝える」という役割もあります。
近年、食の安全や信頼にかかわる問題、外国からの食料輸入に依存する問題など、食を取り巻く環境が変化しています。こうした中で、食に関する知識を身に付け、健康的な食生活を実践することで、心と身体の健康を維持し、生き生きと暮らすために、「食べる力」=「生きる力」を育むことが重要です。
■生涯を通した食育の推進
▽健康な心と身体をつくる
食生活と健康は深く関係しています。朝ごはんを食べないと、1回の食事量が増えて食べ過ぎることがあり、肥満や生活習慣病の発症につながることがあります。『朝は忙しくて時間がない』、『朝ごはんよりも寝ていたい』と思うかもしれませんが、朝ごはんは一日のパワーの源であり、寝ている間に低下した体温を上昇させ、一日の活動に向けて身体を整えます。
本市では、このような朝ごはんの大切さを市内各園の5歳児を対象に実施している「食と健康教室」でお話しています。
▽食の安全を伝える
9月29日に開催した第3回消費者セミナー「『食と健康』のウソ・ホント!」では、群馬大学名誉教授の高橋久仁子さんから、食に関する情報の見分け方について講義をしていただきました。食の情報には、「これさえ食べれば健康バッチリ!」のようなウソや大げさなものがたくさん混ざっていることや、食べ物や栄養が健康や病気に与える影響を過大に信じる「フードファディズム(Food Faddism)」の危険性があることを学びました。「健康的な食生活」を営むには、食品に効能・効果を求めすぎないこと。そして、健康のためには、「適度な運動・睡眠・食事」が大切だということを認識しておきましょう。
▽地元でとれた食材を食べる
たんぼの子体験事業は、「育て」、「収穫し」、「食べる」という一貫した体験学習を通して、農業への関心を高めるとともに生命や食べ物の大切さを学んでもらうことを目的に、市内の全小学校22校で実施しています。この体験事業は、米の生産現場への関心や理解を深めるだけでなく、食生活が自然の恵みの上に成り立っていることや食に関わる人々のさまざまな活動に支えられていることなど「食」に関する理解を深めることにつながります。
▽食文化を伝える
食文化(郷土料理・伝統食)の継承を目的として、「どろ亀汁」の紹介動画を作成しました。「どろ亀汁」は、古くから五個荘地区の近江商人宅で夏場に作られた味噌汁です。これにはすったごまやご飯が入っており、味噌汁が泥のように見え、中央にある皮に切れ目を入れたなすが亀の甲羅のように見えることから名付けられたと言われています。
■大切なのはバランスの良い食事
いつも食べている食事に、主食・主菜・副菜はありますか。
主食は、ご飯・パン・麺などを主材料とする料理で、エネルギー源になるものです。主菜は、肉、魚、卵、大豆などを主材料とする料理で、筋肉や骨など身体をつくるものです。副菜は、野菜・きのこ、海藻などを主材料とする料理で、ビタミン、ミネラル、食物繊維など身体の調子を整えるものです。
いろいろな食べ物を組み合わせて食べることで、必要な栄養素を過不足なく摂取でき、適正体重の維持や生活習慣病などの病気を予防することができます。
▽塩分過多と野菜不足は健康の敵
東近江市食育推進計画(第2次)では、1日平均野菜摂取量の目標を350グラム、食塩摂取量の目標を8グラムとしています。しかし、令和4年度「滋賀の健康・栄養マップ」の調査結果では、野菜摂取量の平均値は208.7グラムで、目標野菜摂取量(350グラム)に足りていません。野菜は「健康に良い」と分かっていても、意識しないと十分に食べることはできません。
反対に、食塩摂取量は10.6グラムで、目標の8グラムより多くなっています。食塩を摂りすぎると、血圧が上がり、循環器疾患のリスクが高まります。減塩を心掛けましょう。
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