■足らぬ足らぬは工夫が足らぬ~太平洋戦争時代の「代用品」
まずは本紙写真をご覧ください。学生服につける「ボタン」、煙草を吸う「キセル」、お風呂で使う「洗面器」、金色に輝く「ベルト金具」。なんの変哲もない、レトロな日用品に見えるかもしれませんが、これらは実は、太平洋戦争中に作られた、ちょっと特殊な品々です。その名は「代用品」。
昭和時代の初めごろ、日本は中国大陸や太平洋周辺で、中国・アメリカ・イギリスなどの連合軍を相手にアジア・太平洋戦争(1937~1945)を戦っていました。当時の日本は世界的に孤立を深めており、各国との貿易が難しくなったことで、戦争を続けられなくなるほどの物資不足に陥りました。そこで昭和13年(1938)、日本政府は戦争に必要な物資を軍隊や軍需工場に優先的に回すために「国家総動員法」という法律を定めます。この法律によって、主食である米をはじめ金属、木綿・皮革・ゴムなど多くの素材が「統制品」として自由な売買を禁じられ、個人で持っているものも国や軍隊に供出や献納をさせられることになりました。こうして、暮らしに必要な品物を手に入れることができなくなった人びとが、苦肉の策として作ったのが異素材を使った「代用品」です。
ここに紹介した品物はいずれも本来は金属で作られるところを、写真のボタンやキセルは陶器や木・樹脂などで、洗面器やベルト金具はなんと紙で作られています。戦争当時、物資の不足に負けない心意気を鼓舞するため「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」という標語がもてはやされましたが、あまりにも独創的な工夫がこらされたこれらの品々からは、長く続いた戦争に翻弄された人びとのくらしの苦労がひしひしと感じられます。
栗東歴史民俗博物館では、栗東市の「心をつなぐふるさと栗東」平和都市宣言を受けて平成2年度(1990)の開館時より「平和のいしずえ」展を夏季に開催しています。戦争と平和について考えるための機会として、皆さんのご来館をお待ちしています。
■栗東歴史民俗博物館テーマ展「平和のいしずえ2024」
会期:8月3日(土)から9月1日(日)まで
※詳細はお知らせ版8ページをご覧ください
問合せ:栗東歴史民俗博物館
【電話】554-2733【FAX】554-2755
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