■中世甲賀の歴史を今に伝える『山中文書』
『山中文書(やまなかもんじょ)』は、柏木御厨(かしわぎのみくりや)(水口町柏木・伴谷地域)を中心に活動した土豪である山中氏に伝えられた古文書で、中世という時代における甲賀の歴史を知るうえで重要な史料です。
鎌倉時代から江戸時代までの古文書が約500点あり、現在、原本は伊勢神宮が運営する神宮文庫(じんぐうぶんこ)に納められています。原本を普段見ることは難しいですが、そのうち約300点は1959年刊行の『水口町志』下巻に活字化されていますので、図書館でご覧いただけます。
『山中文書』には鎌倉時代から戦国時代までの甲賀と中央政権との関わりについても記述されていて、日本史の教科書で取り上げられるような有名人も出てきます。例えば、後醍醐(ごだいご)天皇や室町幕府将軍足利氏・管領細川家、近江国守護佐々木氏・六角氏といったその時代の権力者とも山中氏は関係を結んでいて、そのような関係をもとに土地や権利を後世に伝えようとした努力の痕跡が史料に残されています。
中世甲賀を理解するうえでキーワードとなる、同族結合の「同名中(どうみょうちゅう)」や一族の枠を越えた「郡中惣(ぐんちゅうそう)」という組織についても、『山中文書』をひもとくことで多くを知ることができます。
同名中は惣領家(そうりょうけ)(本家)を中心に庶子家(しょしけ)(分家)や近隣の土豪が同じ名字を名乗ることで協力体制を築いた組織です。郡中惣は同名中の枠では解決できない甲賀郡と他郡・他国との争いに対応するための組織です。主従関係を結び中央集権的な戦国大名とは対照的に、平等性・公平性を重視した組織として「同名中」「郡中惣」は全国的にも注目されています。
今回紹介した『山中文書』は、2012年刊行の『甲賀市史第2巻甲賀衆の中世』に多くの文書と写真が収録されています。『山中文書』を読むことで、中世における甲賀の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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