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自治体の皆さまへ

宇輝人 vol.90

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熊本県宇城市

■日常に花がもたらす温かな世界を

◇池田愛子 ikeda aiko
昭和16年朝鮮国生まれ。小川町在住。雅号は池田豊愛(ほうあい)。同35年に生け花の小原流に入門。同53年に小原流認定教授者、平成3年に一級家元教授者を取得。今年6月には、流派から名誉一時金を受領し、名誉会員となる。9月には、長年の顕著な功績と後進の育成への取り組みがたたえられ、県芸術功労者に選ばれた。

花々を愛でるように、その柔らかな物腰と優しい言葉表現で周囲を温かな空気で包むのは、池田愛子さん。生け花の3大流派の一つ小原(おはら)流の最高峰の名誉会員で、9月には県の芸術功労者にも選ばれた文化の担い手だ。
高校卒業後、生活していた伯母宅の近くの教室で小原流と出会い、教授の資格を取得。結婚後には一度離れたが、自分も周りも幸せにできる生け花の世界が忘れられず、自宅で教室を開いた。
小原流には多くの型や表現があるが、池田さんはどの場所に作品を飾るかをポイントに置く。「もちろん基礎あってのことですが、私は玄関や床の間などその場所でどう見られるかを意識します。また、そこにあるものをどう使うかも大事。たとえ枯れてきても残りを生かして生け方を変えていく。料理と一緒で、あるものでどう応用できるかを考えますね。」と池田さん。
一番弟子の嶋本恵美子(えみこ)さんは「先生は花々を大切にされます。それは私たちにも同じ。手直しされるときは、生けた花を否定せず、優しくアドバイスしながら私たちのやり方を生かしてくれます。」と話す。

池田さんは、地域の人たちが花を見て明るい気持ちになってほしいと、地域の学校などに生
け花を提供。自身が民生委員だったときは地元の郵便局に自らお願いし、約20年間、週に2、3回花を生けに行った。
他にも、花を生ける楽しみを広めたいと小川中や松橋高の部活動や、生け花親子教室などで
技を伝授。しかし、徐々にその活動を手放し、去る2月には週一度の自宅の生け花教室以外は全て辞めることに。夫、達也さんとの時間を大切にするためだった。
「最後の親子教室では、子どもたちが辞めたくないとなかなか帰らない姿を見て、名残惜し
い気持ちになりました。それでも、夫となるべく一緒にいたい、後悔しないようにしたかったんです。」と池田さん。
去る12月、60年近く人生を共にしてきた伴侶が亡くなった。「花を飾ることで自分自身も寂
しさが癒やされました。」と池田さんは穏やかな表情で振り返る。
毎年、町の文化祭では自身と教室の生徒の作品が会場を彩る。今年の池田さんの作品は、花器が二つ並んだ。マツやユリなどが生けられたメインの器と、その隣には、達也さんが退職記念にもらった高浜焼(たかはまやき)に添えられたコチョウランと金糸梅(キンシバイ)。自身夫婦をイメージした。
「これからも健康で、自宅で皆さんと一緒に生ける喜びを分かち合っていきたい。人との出
会いを大切に、自分なりのお花へのまっすぐな気持ちを大切に、続けていきたいです。」
とにかく花と向き合うことが楽しいと話す池田さんは、今を大切に、穏やかな世界を生きて
いく。

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