■食の大切さを子どもたちに
◆丘 寛史 Oka Hiroshi
昭和25年松橋町生まれ。松橋町の老舗中華店「華月園」の会長。昭和51年から約40年間、松橋小学校のハンドボール部の外部コーチを務めたり、10年ほど前からは同校の児童にボランティアで野菜づくりを教えるなど、教育分野にも携わっている。今年1月には、社会奉仕や環境美化に取り組む人をたたえる「第128回熊日緑のリボン賞」を受賞した。
◇野菜の先生
「先生見て!大きいニンジン採れた!」と子どもたちの楽しそうな声でにぎわう学校菜園。その様子を優しい笑顔で見守っているのは丘寛史さんだ。
10年ほど前からボランティアで松橋小学校の1~3年生に授業の一環で野菜づくりを教えている。
丘さんは、26歳から同校のハンドボール部の外部コーチなどで校内活動に携わっており、同校の教師から野菜づくりの指導者を打診された。
自身が飲食店を経営していることから、食を大切にする気持ちは大きい。「野菜づくりを教えることを通して、食べ物の大切さを子どもたちに伝えたい。野菜を好きになってたくさん食べてほしい。」という気持ちで引き受けたそうだ。
野菜づくりは家庭菜園程度の知識であったため、授業を行うに当たって、知り合いの農家に技術やコツを学んだ。
野菜をつくるときに農薬や化学肥料は使わない。学校の草取りで出た草でつくった堆肥や自身が経営する飲食店で出た卵の殻を肥料にするなど、周りの物を無駄にしない野菜づくりを心掛けている。
◇授業で伝えたいこと
授業では、季節に応じて、ニンジンやジャガイモ、ナスなど約10種類の野菜を栽培。種植えから水やりや草取りなどの手入れ、収穫までを行う。
「野菜ができるまでの手間暇を体感することで、食べ物を残すことも減ると思います。食べ物を大切にする意識を持ってほしいです。」とフードロスについても考え、子どもたちに伝えている。
丘さんは、ハンドボール部の外部コーチなどで長年子どもと関わっていたことから、子どもへの接し方が上手だ。子どもたちに「大きくなってほしいという気持ちを込めてお世話してね。」と優しく伝える。
収穫の時には、子どもたちと一緒に土まみれになりながら作業。楽しんで収穫している子どもたちを見て、丘さんの顔がほころんでいるのが印象的だ。
一般的に、野菜嫌いの子どもも多いといわれるが、丘さんが関わる子どもたちはほとんどが野菜好きだという。子どもたちが自ら育て収穫した野菜は、争奪戦になるほど喜んで家に持ち帰ることがその証しだ。
「自分たちで育てると、大変だった分おいしく感じるのだと思います。」と丘さんは分析する。
◇自分の楽しみとして
「この活動を大変だと思ったことはありません。野菜をつくることも子どもたちに教えることも、自分の楽しみとしてやっています。授業を通して子どもたちに食べ物の大切さを知ってもらえたら本望です。」と笑顔で話す丘さん。
今シーズンは、ニンジンやジャガイモの収穫を終え、10月からダイコンやさつまいもの収穫を予定している。
丘さんの話す表情やしぐさから本当に野菜づくりも子どもも好きなことが伝わってくる。丘さんが伝えたい思いは、授業を通してしっかりとたくさんの子どもたちへ受け継がれていく。
※写真は本紙をご覧ください。
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