令和5年の日本全国の自殺者数は21837人にのぼり、最も多かった平成15年よりも約37%減少していますが、いまだに年間2万人を超える人が自殺で亡くなっているのが現状です。熊本県内では279人、市でも毎年十数人の尊い命が自ら絶たれている状況にあります。一人でも多くの命を守るためには自殺予防対策を地域で広めていく必要があります。
宇城市の自殺者数と自殺死亡率の推移
◆ゲートキーパー養成講座の講師を務める、医療法人社団明心会あおば病院の谷川さんに聞きました。
あおば病院 精神科・心療内科医療支援部 副部長 認知症治療病棟
長谷川 由利(ゆり)さん
▽自殺の現状
令和5年の全国の自殺者数は前の年より、44人減少しましたが、男女別でみると、男性は2年連続の増加、女性は4年ぶりの減少となり、男性の自殺者が女性の約2・1倍となりました。熊本県の自殺者の傾向も全国と同じく40代から60代の男性の割合が高く、全体の約4割を占めています。
原因・動機は健康問題が全体の約4分の1を占め、次いで経済・生活問題、家庭問題、勤務問題となります。
また、もう一つ全国と同じ傾向にあり、気になるのが10代から30代までの死因の第1位が自殺となっていることです。現代社会の職場のストレス、学校問題、家庭問題などが要因となっています。
また、皆さんは、自殺者は一人暮らしに多いというイメージの人もいるかもしれませんが、実は同居人ありの自殺者数は、同居人なしの場合に比べて2倍以上も多い数値となっています。同じ家に住んでいても孤独を感じている人が多くいます。
自殺の多くは一つの原因から生じるものではなく、さまざまな要因が連鎖することで起きると考えられます。その中でも「孤立」が共通した要素の一つとなっていて、社会とつながることが一つの鍵になります。特に家族の力は大きく、「居場所がある」「ここなら話を聞いてもらえる」という安心できる場所、味方と思える人がいることはとても大事なことです。家族や友人、安心できる場所など地域とのつながりが大事になります。
▽私たちにできること
ゲートキーパーの役割は専門知識や資格は必要なく、誰でも担うことができます。ゲートキーパーに期待される4つの役割「変化に気付く」「じっくりと耳を傾ける」「支援先につなげる」「温かく見守る」を意識し、身近な人が落ち込んでいたら、まずは優しく声を掛けてみてください。その行動がゲートキーパーの第一歩となります。
全ての自殺を防ぐことはできませんが、この記事を読んでいる皆さんが悩んでいる人に気付き、声を掛けることで、自殺を減らすことができます。私たち一人一人が自殺予防の担い手、ゲートキーパーになりましょう。
◆POINT ゲートキーパーとしての役割
▽ゲートキーパーとは
悩んでいる人に気付き、声を掛け、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る「命の門番」となる人のこと。できることを意識して行動することで、専門家ではない私たちでも自殺予防に取り組むことができます。
1.変化に気付こう体調や生活の変化を気に掛ける
2.耳を傾けよう本人が話すのを待ち理解者となる
3.支援先につなげよう早めに専門家に相談するよう促す
4.見守ろう温かく寄り添いながらじっくりと見守る
◆相談窓口
1人で悩まず まずは相談
▽電話
・熊本県こころの悩み電話相談
【電話】0570-030-556
平日18:00~翌日9:00、土日祝24時間
※通話料が発生します。
・社会福祉法人 熊本いのちの電話
【電話】096-353-4343
24時間(年中無休)
フリーダイヤル
【電話】0120-783-556
毎日16:00~21:00
毎月10日8:00~翌8:00
ナビダイヤル
【電話】0570-783-556
毎日10:00~22:00
・(公社)熊本県精神保健福祉協会 熊本こころの電話
【電話】096-285-6688
11:00~18:30(年中無休)
・県精神保健福祉センター こころの健康相談電話
【電話】096-386-1166
月~金9:00~16:00(祝日・年末を除く)
▽LINE
・こころの悩み相談@熊本県
毎週月・水・金18:00~22:00(最終受付21:30)
・生きづらびっと
8:00~22:30(22時まで受け付け)
※詳しくは本紙P.19をご覧ください。
問合せ:社会福祉課
【電話】32-1387
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