誰もが人間として生きていくうえで侵すことのできない当然の権利これが『人権』です
■寝た子はネットで起こされる⁉
12月5日、矢部保健福祉センター千寿苑において「山都町人権を考える町民の集い」を行い、山口県人権啓発センター事務局長、川口泰司さんによる講演会を行いました。
今回は、その講演内容の一部を紹介します。
◇「寝た子を起こすな」論
部落問題で必ず出てくる意見が「寝た子を起こすな」論です。「もう今の若い子たちは部落とか気にしていないし、そんな部落差別のことを知らないのだから、何も教えず、そっとしといたら、そのうち差別はなくなる。わざわざ、寝た子をおこすようなことはしない方がいい」という考えです。
これが、いわゆる「寝た子を起こすな」論です。この「寝た子を起こすな」論を言っている人の、多くは「部落差別なんかおかしいよね」「同和地区の人が差別される、そんなのおかしいよね」って思っている人が言っているんですよ。
「部落差別は許せない、おかしい」と思っているのに、なぜ、「寝た子を起こすな」論になるのか、その要因の一つは「差別の現状認識」の違いからきています。もう、今は部落差別なんか、ほとんどなくなっているし、たいしたことないよ。だから、そっとしといた方がいいと、「差別の現状認識」の違いからくる「消極的な差別解消論」と捉えたらいいと思います。こういった意見を言っている人に対しては、一緒に学習を進めていくことです。
◇差別は見ようとしなければ見えない
インターネットの普及によって、「寝た子はネットで起こされる」時代になっています。現在のネット時代における部落差別の現実を踏まえて、改めて部落差別の現実を一緒に学んでいくことが大事だと思います。差別の現実を知ることで「自分の周りでも、こんな差別の現実や状況になっているのか」と差別の現状認識が変わるなかで、正しく「差別の現状を認識」していくことで、「寝た子を起こすな」論の間違いに、自分自身で気づいていきます
◇悪化するネット上の部落差別の現実
今、インターネットやSNSなどの便利な機能やサービスが差別に悪用・乱用され、深刻な人権侵害や差別扇動が起きています。ネット上では、部落に対するデマや偏見、差別的情報が蔓延し続けています。部落問題について「無知・無理解」な人ほど、そうした差別情報の影響を受け、部落に対する偏見や差別意識が強化されています。
特にSNSや掲示板・コメント欄などでは、部落問題に関する投稿は、偏見や差別意識に基づく情報が多く、「差別助長教育」「差別扇動教育」が日々進行している状況です。部落問題に無知、無理解、無関心だった人が、このような偏見や差別を助長する情報に接して、見事に誤った認識、差別的で偏った価値観に陥っていきます。
また、ネット版「部落地名総監」「部落人名総監」「部落マップ」までが作成され、ネット検索で容易に「どこが部落か」「誰が部落出身者か」などの差別身元調査・土地差別調査が可能な状況になっています。
「部落差別解消推進法」施行から七年を迎えますが、すでに理念法の限界が明らかとなっており、差別禁止規定を盛り込んだ「部落差別解消推進法」の改正が求められています。
全国水平社創立から一○○年を迎えました。水平社宣言は最後に「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と謳っています。「部落の人に熱あれ、光あれ」じゃないんです。「人の世」なんです。差別はする側の人間性や社会性も壊しているのだと。だから、そんな「する」「される」関係性をなくして、対等な関係、水平な社会を作っていこうと立ち上がりました。それから一○○年が経ちました。
この一○○年後のバトンは今、私たちに渡っています。次の一○○年、私たちはどんな社会を次の世代に残していくのか。水平社が目指した「よき日」に向けて、みなさんと反差別の生き方を共にしていきたいと思います。
自分の人権を守り他人の人権を守る責任ある行動を
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