地域おこし協力隊の伊藤真紀(まき)が、山鹿の旬や気になったものを取材して発信します。
今回は、来民渋うちわ骨師の堤大介(だいすけ)さん(菊鹿町・工房は鹿本町)を取材しました。
■堤 大介さん(43歳)
取材を快く引き受けてくださり、終始笑顔で語ってくれた堤さんは、8年前に大津町から移住してきて来民渋うちわ骨師になりました。古い建物に住むのが高校生からの夢で、気に入った家が山鹿にあったため移住を決めたそう。移住前から親交のあった栗川商店の栗川亮一(りょういち)社長から「うちわ職人にならないか」と誘われ、もともと物作りが好きだったこと、職人は年を重ねるごとに技術が上がり、生涯働けることから決心しました。
■歴史
1600年頃に来民を訪れた四国丸亀の旅僧が、一宿の謝礼にうちわの製法を伝授したのが最初と伝えられ、1638年には藩主細川忠利(ただとし)公が、原材料に恵まれている来民でのうちわ作りを奨励したといわれています。
■特長
柿渋を塗ることで、柿渋に含まれるタンニンの働きにより防虫効果が働き、100年でも使えると例えられるほど丈夫で長持ちします。また、年月を重ねることによって、塗られた柿渋が年々濃く変化し、色合いが深みを増し風格を感じさせます。
■工程
1 竹切り
2 水漬け
3 水上げ
4 荒竹取り
5 節落とし
6 中割り
7 小割り
8 もみ下ろし
9 穴あけ
10 柄削り、柄染め
11 くもで入れ
12 編み、編み付け
■魅力
来民渋うちわの魅力は、竹・和紙・柿渋・でんぷんのりと純国産の自然のもので作られていて、子どもが口に入れても安全なことです。また、和紙が破れても骨が使えるようであれば、和紙を張り替えて何度でも使用できるので、まさに環境に優しいうちわといえます。
(5)節落とし
節を落として平にする
(6)中割り
節があった部分に切り込みを入れ、竹を割り表皮のみ残す
(7)小割り
切り込み機で骨の部分を作り出す
しっかり押さえておかないとずれます
力加減が均等でないと厚みにばらつきがでます
(8)もみ下ろし
小割りした部分から柄になる部分まで割く
左の腰に柄になる部分を当て、固定して行うのがポイント。
(9)穴あけ
くもでを入れる穴をあける
(10)柄削り
削って柄の部分を作り出す
(11)くもで入れ
骨で一番重要といえるくもでを入れる
(12)編み、編み付け
糸を骨に編み付ける
■大事なこと
一番大事なのは骨作りの原料である竹の管理で、草刈りや間引きなどを年間通して行っています。そのため、うちわの骨作りよりも多くの時間を費やしています。
→使用する竹は真竹で、節間が長く、弾力性があるのでうちわ作りに最適。
■気を付けていること
天然の素材なので安全に使えるように、なるべく虫が付きにくい時期に竹を切ったり、時期がずれた竹は熱湯で炊くなどして気を付けています。
■やりがい
お客さんが喜んでいる姿を見られることです。同じ作業の繰り返しですが、竹の硬さや柔らかさが1本1本違うので、変化があるのが楽しいですね。生ものを扱っているので飽きないし、自分の技術が上がっているのを実感できます。
■将来の展望
昔の職人が作っていた骨を復活させたいですね。作れる人が誰もいないので。また、山鹿には和紙の原料である楮(こうぞ)が栽培されているので、自分で和紙をすき、全て山鹿で完結させたいです。さらに、物作りの楽しさをワークショップを通してたくさんの人に伝え、うちわのある生活を広めていきたいです。
▽~取材を終えて~
私も小割りともみ下ろしを体験しましたが、小割りは竹が想像以上に硬く、最初は全く刃が入りませんでした。もみ下ろしもなかなかできません。来民渋うちわの伝統を守りつつ、新しいことにも挑戦し続ける堤さんは輝いていました。
堤さん、お忙しい中ご対応いただきありがとうございました。
皆さんもぜひ、この夏は来民渋うちわで涼みませんか?
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