■ 体罰などのない子育てを広げるために 聞き合う子育て 始めませんか
子どもをたたく、ご飯を与えないなどの体罰だけでなく「うまなければよかった」「あなたはダメな子」といった心を傷つける言葉も子どもの権利を侵害します。体罰によらない、子どもの権利を侵害しない子育てをするためにはどんなことが必要か、心理カウンセラーの三浦佑子(みうらゆうこ)さんに話を聞きました。
□ 子育て中の人は受援力を持つこと
虐待は子どもの人権を侵害すること、しつけは行動の修正をすることで、両者は大きく違います。「○○くん!ダメでしょ!」と怒鳴るだけでは、子どもは人格否定されたと感じ傷つきます。「この行動の何がいけないか」を説明することが大切です。不機嫌な大人が、言葉や態度で子どもに当たるという現象は不適切な養育とされており、落ち着いて子育てをするためにも大人は自分の機嫌をとっておかないといけません。
虐待の予防は、親子や夫婦で日常的に会話があること。「聞き合う」「相談し合う」といった「〜し合う」という関係性を持ち家族の問題を話し合いで解決しようとすることが最も重要です。しかし、子育ては家族だけでは難しいので家庭の風通しを良くするために、話を聞いて手立てをくれる他者に頼るのは当然のこと。子育て中の人は経済的・時間的・精神的ゆとりを失いやすく「助けてもらっていい」と受援力(じゅえんりょく)を持たないと、虐待が起きやすい状況をつくります。お父さん、お母さんは子育てから少し離れて1人になる時間も必要です。どんなにかわいいわが子でも、育児感情が高まるときと、落ちるときとが交互にやってくることがあります。それはストレスのせいで、子どもと一緒に居すぎているということ。会えない時間が親子の絆(きずな)を育て、それは赤ちゃんのときから必要なものです。社会でみんなに育ててもらっていいという啓蒙(けいもう)が必要だと思います。子どもに愛を注ぐことは大前提ですが、ゆとりを持って育児をするためにも親の立場の皆さんには自分のことも大事にしてほしいです。
□ 子育てで重要なこと
・「ありがとう」を言う
幼いころに一番心の栄養になるのは「ありがとう」です。「しなくていい」というマイナスの言葉は子どもはないがしろにされたと感じます。家では小さなお手伝いをたくさんさせてあげた方が良いです。
・話をとことん聞く
笑顔でうなずいて聞くという態度を親が身に着けることが重要です。「言わなきゃ分からないでしょ」とよく家庭では言われますが「聞かせて?」と普段から言葉尻をあげて聞く態度を持っていると話してくれます。
・甘やかしと甘えは違う
本人がお願いしていないのに歩ける子どもを抱っこするのは甘やかし。子どもが自分から抱っこを求めるのは甘えで情緒的な交流。たくさん甘えを受け入れてもらえると、自主性も適応力も育ち、自立しやすくなります。
・感情表現は止(と)めない
泣いているなら「いっぱい泣いていいよ」と受け止めます。ストレスを発散しているかもしれませんし、感情はあるがままに出してあげないと癒されないものです。
・ダメ出しよりも勇気づけ
幼い頃から「どうせできないよ」とダメ出しされた子どもは、ネガティブな行動支援を受けたことになり、自信を失います。「あなたならできると思うよ、わ〜できたね!」と勇気づけ、認めて一緒に喜びましょう。
■ 体罰などによらない子育てのための工夫のポイント
・子どもの気持ちや考えに耳を傾けましょう
相手に自分の気持ちを受け止めてもらえたという体験によって子どもは気持ちが落ち着き、大切にされていると感じます。
・子どもの発達によって異なることもあります
年齢や発達の状況によって、できることとできないことがあります。子ども自身が困難を抱えているときは、それに応じたケアが必要なこともあります。
・「言うことを聞かない」にも理由があります
保護者の気を引きたい、子どもなりに考えがあるなど、さまざまな理由があります。「いやだ」というのは、子どもの気持ちです。その感情を持つこと自体はいけないことではありません。
・子どもの状況に応じて環境を整えましょう
子どもが困った行動をする場合、子ども自身も困っていることがあります。子どもが自分でできるように環境を整えましょう。
・注意の方向を変え、やる気に働きかけましょう
子どもはすぐに気持ちを切り替えるのが難しいこともあります。待つことや、場面を切り替えること(散歩をするなど)で子どもの気持ちや行動が変化するかもしれません。
・肯定文で分かりやすく、時には一緒に
「走らない!」ではなく「ここでは歩いてね」など肯定文で何をすべきか具体的に、また穏やかに、近づいて落ち着いた声で伝えると、子どもに伝わりやすくなります。「一緒におもちゃを片付けよう」とやり方を示したり教えたりすることもできます。
・できていることを具体的に褒(ほ)めましょう
子どもの良い態度や行動を褒(ほ)めることは、自己肯定感を育(はぐく)むことになります。何が良いのかを具体的に褒めると、子どもにより伝わりやすくなります。
・保護者自身の工夫
否定的な感情が生じたときは、そういう気持ちに気付き認めることが大切です。その原因が子どものことなのか、自分の体調の悪さや孤独感など自分自身のことが関係しているのかを振り返ると気持ちが少し落ち着くかもしれません。
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